米控訴裁、政府側の訴え退け―ビザ無効措置も撤回

 米国でトランプ大統領がイスラムの7ヶ國からの入国を禁止する大統領令に署名して世界中から非難の声が上がり、空港などでの混乱も見られたようだが、連邦裁判所がそれを無効とする判断を下し、とりあえずは、これらの国からの入国も認められるようになり、やれやれといったところである。

 トランプ大統領はこの決定に反対しているようなので、まだどういうことになるのか経過を見守っていかなければならないが、世界の歴史の流れに反したこのような人種差別的な政策は何としてもやめてほしいものである。

 ナチスドイツがユダヤ人排斥運動を起こした時に、人々が自分には関係のないことだとあまり関心を示さなかったことが、ナチスを増長させ、行き着く先にあのアウシュビッツの大量虐殺につながった歴史を思い出しても、こういった人種差別的政策には全ての人が敏感に危険を感じ取って反対することが必要だと思う。

 それでもアメリカではかかる政府の暴挙も裁判所の判断で止められたことは注目すべきことである。アメリカにはまだ民主主義を守る機構が働いていることに心強さを感じたのは私だけではあるまい。

 それに比べると日本はどうであろうか。こちらでは、一昨年の秋に明らかに憲法違反としか考えられない安保関連法案が強行採決で議会を通ってしまったが、それを覆すような裁判も、一時的に止める仮の執行処分さえ起こっていない。このまま戦争のできる国へと政府はどんどん事をすすめている。

 この国では、かって最高裁判所の田中耕太郎裁判長が立川事件の裁判で、下級審の伊達裁判長の基地を違憲とした判断に驚いて、判決以前にアメリカと話を通じ、安保条約を優先させ、「統治行為論」とかで憲法解釈を超えて合憲とした歴史も示すように、三権分立の民主主義がすでに失われており、司法が政府を抑えることができないのが現実のようである。

 安倍首相はトランプ大統領の今回の措置については何も語らず、日本の年金資金を使ってアメリカの雇用を70万人増やすなどの提案を用意してトランプ大統領との首脳会談に備えるなど、国民を無視してアメリカに忠実な属国ぶりを示して媚を売ろうするばかりである。全く情けないことである。