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帰ってきたヒトラー

 最近「帰ってきたヒトラー」というドイツの映画を見た。これは日本でも河出文庫に訳本が出ているドイツでベストセラーになった小説を映画化したものらしいが、なかなか面白かった。というよりも、このストーリーを日本に当てはめて考えても、今の世相に当てはまる部分も多く、何か恐ろしさを感じさせれもした映画であった。

 ストーリーはある日、本もののヒトラーが生き返るところから始まる。初めは周囲の人は皆コメディアンがヒトラーに化けているものとばかり思っており、あるテレビの企画会社がよくあるヒトラーに扮したコメディアンとは一味違うので、このヒトラーを利用して番組をこしらえようとする。生き返ったヒトラーは現在の社会をよく観察し、現在の世情を知って批判し、自分なりにそれに対応して、自分の考えを少しづつ広げ、もう一度夢を実現しようとして、それに乗っかる。その結果テレビで大当たりする。

 テレビに出演したヒトラーは現在の社会を嘆き、過去の自分の主張を述べまくる。さすがにうまい演説で、過激でユーモラスだが、真理をついていると評判になり、次第に現在の世に不満を抱く人たちの共感を帯び、モノマネ芸人として大当たりしただけでなく、次第に大衆の心を捉え始めるというもの。

 「ヒトラーを笑いっているのではなく、ヒトラーと一緒に笑っている」のがこのストリーとなっており、いつしかそれに気がついて戸惑うとともに、何とも恐ろしい気持ちになる、ヒトラーのタブーに挑戦した話になっている。

 映画を見たので、その後、文庫本も買って読んだが、本も世界中で翻訳され、何百万部も売れたというベストセラーだそうで、映画よりこの方が内容も豊かで面白かった。著者はTimur Vermesというハンガリーからの移民で、原題は「Er ist wieder da」という音楽からとったものだそうである。

 日本では過去にもヒトラーのような個性の強い独裁者が引っ張ったわけではなく、「村社会」を引き継いだ無責任な集団が国を滅ぼしたのであるが、戦後70年経ち、今や再び昔の亡霊のような神がかりな集団が蠢き、「日本を取り戻せ」などと騒ぎ出し、再び大衆がそれに乗せられてあらぬ方向に突っ走って行きかねない世の風潮が感じられる時だけに、単なる架空の話と言ってっ笑って済ませられないような感じにさせられた。