映画「老後の資金がありません」

 「老後の資金がありません」という映画を見た。女房に連れられて行ったのだが、なかなか評判の良い映画らしく、初めに行った時は満員で切符が買えず、すごすごと引き返さざるを得なかった。仕方がないので、日を変えて再度赴いたが、その時はそれほど混んでもいなかったのでゆっくり鑑賞できた。

 老後の資金については、昨年だったか、最低2千万円は必要だとか言われ、あちこちから悲鳴が上がり、色々議論がされたことがあった。国の経済が伸び悩み、少子高齢化の時代で、今後もますます高齢者が増えるので、多くの人の関心を引いたのも当然であった。今後次第に大きな社会問題になって行きかねないであろう。

 ところがこの映画はそういった深刻な問題を取り上げながら、それを面白おかしく話をでっち上げたもので、上映中もあちこちで笑い声が絶えなかった。三谷幸喜の脚色か何かだそうで、監督は前田とかいう人だったが、いかにも三谷幸喜らしい作品に仕上がっていた。

 老後の資金が足りないと思っている嫁である主人公が、義父の死を看取って葬式をするのに、周囲の思惑もあり、葬儀屋とのやり取りでそこそこの点で妥協して執り行ったが、可成り無理をして張り込んだのに、式場の来賓者は少なく、席がガラガラだったところから始まる。

 続いて娘が結婚することになり、相手が芸能人で、派手に式を挙げるげると言い出して費用の心配をせねばならないかと思ったり、派手な義母の養育についての金銭的な問題で夫の妹と争わねばならなかったり、そこへ思わぬ夫の失業なども起こり、ヨガの教室の友人の絡む年金詐取の問題、ストレス解消のボーリングなど盛り沢山で、次々と問題が起こり、困惑する様をたっぷりユーモアを交えて展開していて飽きる暇もない。

 最後に娘の派手な結婚式があり、老人のシェアハウスの楽しそうな生活で終えるので、最後まで明るい気持ちで幕を閉じる楽しい映画であった。ただ、現実に帰った時に、老後の資金の問題はどうなったのか心配が浮かび上がってくる。シェアハウスが問題の解決にはなりそうにないし、そんなことを考えるより、何とかなるから現在を楽しめと言っているような気がした。