むやみに J-アラート を使うな

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 28日のこのブログで、北朝鮮の危機を政府が煽っていることを書いたら、その翌日の朝6時にJ-アラートやらで国民は叩き起こされ、「国民保護に関する情報」として、「ミサイル発射、ミサイル発射、北朝鮮からにさいるが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」とびっくりさせられる事となった。

 しかし、その警報の範囲があまりにも広すぎ、日本の北半分近くにもなり、そんな広い範囲の何処へ飛んでくるかもわからないミサイルに対して、急いで何処へ避難して良いのか、頑丈な建物や地下室が近くにあるとは限らず、どう対処して良いのかわからない馬鹿げた内容であった。ただ国民を怖がらせるだけで、国民保護どころか国民を愚弄するようなもので、安倍内閣が天佑とばかりにこの北朝鮮のミサイルを利用してさらに大々的に危機を煽っている様子が明らかになった。

 インターネットに安倍首相が金正恩に電話して、「加計学園問題が難しいので、また一発やってくれないか」とミサイル発射を頼んでおり、両者はつるんでいるのだとするフェイクニュースを誰かが仕立てて載せていたが、それもありうるとさえ考えられる状況と感じる人がいるからであろう。

 安倍首相の発言を見ても、朝の会見早々、故意かどうか「我が国北朝鮮がミサイルを発射した」と言ったし、「発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と言い、ミサイルが我が国を狙ったものでなく、日本を飛び越していくことも知りながら、国土の半ば近くの広範な地域に国民に避難を勧めるるJアラートを出すなど、どう見ても国民保護どころか、国民を脅し、怖がらせて、緊迫した情勢を作り出し、自らに失政を隠し、政府の支持を増やし、軍備増強しようと計算して行動しているとしか思えない。

 そもそも弾道ミサイルといっても爆弾を積んでいるわけではないのである。いわば空の爆弾である。万一落ちたところで大きな被害が出る可能性は初めから少ない。国民の上を自由に飛ぶオスプレイや米軍機の方が危険ではなかろうか。アラートの発令は内閣官房が人為的に決めることになっていることを知れば、ますます怪しくなる。

 Jアラームはあちこちで警報の不備もあったということなので、警報システムのチェックには役だったかも知れないが、そのため学校が休校になったり、電車が止まったり、社会的にもかなりのの弊害も見られたようである。こういうアラートは戦時中の「空襲警報」のようなものであるから、適時に的確に行われないと人々の不安を煽るだけで、信用を失くせば、いざという時に返って危険なことも考えておくべきであろう。

 これだけ広範囲の国民に避難を呼びかけながら、原発の一時停止をしていないのも馬脚を現しているところであろうか。このミサイルが我が国の上空を越えていったというが、上空ではなくて大気圏外のはるかに高い、人工衛星の軌道よりもさらに150km離れた、高度にすれば550kmの軌道を通過したものであり、我が国の上空通過というのも問題があるし、襟裳岬の東方1150kmに落ちたというが、この距離は平壌と東京の距離より遠いのである。いずれも無理に危険と結びつけている表現の仕方であることも気になる。

 イラクリビアの前例から北朝鮮が核やミサイル開発が自衛のために必須と感じているることも理解できるし、アメリカ主導の国際社会で「集団いじめ」にあっているような四面楚歌の北朝鮮が自らのの生存のために必死になっている姿を見れば、国の体制の如何にかかわらず、この問題の解決は話し合いか、さもなければ朝鮮半島や日本列島の全面的崩壊を来す戦争しかないであろう。

 アメリカにとって後者に突き進むだけの利点はないので、恐らくすでに始まっているでろう北朝鮮とアメリカの水面下の交渉の先に希望を託しているものと思われる。そこまで読めば、安倍政府の現在のやり方はアメリカの方針ともどこかで乖離していく恐れが強い。目先のことに捉われて更なる将来を誤らないことを望む。

 国民保護のためには小さな利己の利益より、北朝鮮を含めた東アジアの安定した平和を築くために、意味のない圧力より、6ヶ國協議のような東アジアや関係国の話し合いの復活を通じて、北朝鮮の立場も尊重した平和的な協調を進めてほしいものである。