オオカミ少年

 先日、4月13日、北朝鮮が新たな固形燃料の大陸間弾道ミサイルを発射した時、政府はまた全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。発射後約30分後の7時55分頃の発令で、8時0分頃に北海道に落下する恐れがあると判断し、北海道全域を対象として、「直ちに建物の中、または地下へ避難してください」ということで電車は止まるし、通勤は待機、住民は避難など混乱を巻き起こした。

 ところが、約20分後の8時15分頃、7時53分頃にミサイルがEEZに落下したことが確認され「落下の可能性は無くなった」と訂正された。発射後一旦大気圏外に出てレーダーから消え追跡不可能になったが、危険性を速やかに国民に知らせるためアラートを出すのが適切だと判断したものだと言われる。

 現場は緊急の判断でやむを得なかったのであろうが、探知の性能が足りないことが暴露されたばかりか、EEZに落下したのが7時53分でアラートが出たのが7時55分では、発令が遅すぎて役に立たず、ただ単に混乱を巻き起こしただけであったことを表している。

 昨年11月にも、弾道ミサイルが太平洋に通過したと見られるとして、小笠原にまでアラートを出したが、実際には通過していなかったこともあった。

 浜田防衛大臣は「空振りに終わっても出し続けるというのは絶対条件だ」と言うが、探知の精度を上げる努力をして、もっと速やかに実地に役に立つアラートを出さなければ、いたづらに国民を惑わすだけで、国民の安全確保には役に立たないのではないか。政府が意識的に国民の不安を煽るために出しているものとも取られかねない。

 その上、こういう多くの国民を巻き込む重大な警報は、よほど慎重に取り扱うべきもので、軽はずみに用いることはかえって国民を惑わせ、重大な事態にもつながりかねないことを銘記すべきであろう。

 誰もが知っているオオカミ少年の話を思い出すべきであろう。気軽に繰り返される「狼が来た」という警報は、人々に「またか」と思わせるだけで、やがて人々に無視されて、実際の狼の来襲時に役に立たなくなる話の如く、実際の攻撃時に「またの警報か」と人々に軽く受け取られ、大惨事にも繋がりかねないことを知るべきである。

 Jアラートはそういうかけがえのない重大事のために備えるものであり、軽々しく用いることは極めて危険であることを銘記すべきであろう。