戦前に似てきた報道

   先日沖縄で二十歳の女性が元アメリカ兵で今は軍属となりいアメリカ基地内で仕事をしているアメリカ人に通りがかりに強姦され殺され、死体を遺棄されるという事件が起こった。ちょうど伊勢志摩オバマ大統領他各国の首脳が出席してG7の会議が始まる直前で、政府がその対応に大騒ぎをすることになったが、それについての報道が異常なことになっていることがインターネットなどで言われている。

 元アメリカ兵が犯人として浮かび上がり沖縄県警が事情聴取を始めたことを最初に沖縄の新聞が知って報道し、それを確かめて朝日新聞なども報道したが、読売新聞と日経新聞はその被疑者が犯人と断定され身柄を拘束されるまで一切報道しなかったそうである。

 なんでも沖縄の辺野古への基地移転問題がこじれている上に、G7サミットの直前という政府にとって最もタイミングの悪い時の事件なだけに、読売や日経では万一被疑者の容疑が晴れるようなことがあれば、政府の顔を潰すことになるかもという思惑から、上層部が政府に対する忖度から報道を抑えたものであろうと推察されている。

 インターネットなどからの情報によるものなのでどこまで真実かわからないが、最近の報道関係のあり方から見ると十分ありうる話である。

 この国では昔から「お上には逆らえない」「長い物には巻かれろ」等という庶民の身の処し方が「世間」の通例であったこともあり、今でも、直接禁止令など出さなくても利害に関わる圧力をかければ、新聞社の方がその意図を忖度して記事を加減したり、掲載中止にしたりして要望に応える動きが政治的なことや他の例でも見られるので、上記の事実が真実であれば、今また戦前同様な新聞社への無限の圧力がかかっていることを示しているものであ

ろう。

 最近の新聞を見ていると、新聞社によって異なるが、明らかに何年か前とは違ってきている。政府に忖度して大事な記事が書かれなかったり、いがめられたりしているのが感じられる。

 パナマ文書の日本関経の内容にしても大新聞の詳しい報道はないし、東京オリンピック開催に関して日本がJOCだか、国際オリンピック委員へ賄賂を払ったとされるニュースが海外で問題になっているのに日本の新聞ではほとんど載らないようなこともある。

 こういうことがだんだんと強まっていくと、気が付けばいつの間にか政府に組した一方的な記事だけを押し付けられる新聞ばかりということになって行くのではなかろうか。まさに戦前の日本の成り行きをなぞらうものである。

 昔と違ってインターネットなどの報道もあるので少しは事情も違うであろうが、インターネットも何らかの方法で報道がいがめられたり禁止されたりしていく可能性もある。

 政府に憲法を守らせ立憲政治を真面目に守らせることが、こうした傾向を阻止するためにも基本となるであろう。今度の参議院選挙や一連の安保法案違憲闘争に打ち勝つことがこのためにも必要である。