映画「フィラデルフィア」

 先日たまたま家のTVで表題の映画を見た。1993年のアメリカ映画で、トム・ハンクス主演でアカデミー賞などももらっている作品らしいが、エイズとゲイにまつわる偏見を法廷で覆していく物語である。 

 これは1987年に大手の法律事務所にいた弁護士が、彼のエイズ発症に気づいた雇用者から解雇され、法律事務所を訴えた裁判で死亡する直前に勝訴したという実話の基づいたものらしい。

 当時はまだエイズはゲイの間で多い病気で、まだ詳細がわかっておらず、治療法もなく、感染経路も不確かで、罹ればば死に至るのが必須の病気として恐れられ、単に接触するだけでも感染するのではないかと、ゲイに対する偏見とも結びついて、エイズが社会的に問題とされていた時代であった。

 それでトムハンクス演ずる弁護士を雇った大手の法律事務所では、彼にエイズの兆候を見て接触によるエイズの感染を恐れ、トムをなんとか処分しようとしたが、ゲイやエイズで馘にすることは出来ないので、ハンクスの作った報告書を隠したりして、仕事の邪魔をし、仕事の能力を口実に解雇したのであった。

 思わぬ処置に、真の理由を怪しんだハンクスは、事務所を訴えるべく、色々な弁護士にあたるが、なかなか誰も引き受けてくれないので、自分で訴訟に踏み切ろうと色々調べる。

 最終的に頼まれて断った黒人の弁護士は同性愛者を嫌悪していたが、医師に通常の接触では感染しないことを確かめ、たまたま図書館で色々調べているハンクスに出会い、自分にまで向けられる周囲のエイズに関しての偏見の強さを知り、ハンクスの調べていた書類などをも見て、事件の受任を決意する。

 以下は法廷でのやり取りとなる訳であるが、そこでもエイズに対する偏見が露わになったりして、最終的には陪審員の評決で勝訴する。ただし、法廷で倒れ、裁判のすぐ後で自宅で息を引き取るという筋書きになっている。

 法廷劇の部分が多く地味な映画とも言えるが、場所がフィラデルフィアで、裁判に象徴的とも言えるシティホールのウイリアム・ベンの像が出てくるし、バックグラウンドの音楽もなかなか良い映画であった。

 今ではエイズに対する理解も進み、治療法も確立して事情はすっかり変化したであろうが、人々の未知なものに対する不安や恐怖などが容易に偏見にも結びつくことを歴史が教えてくれた出来事であったと言えよう。