革靴、ズックにスニーカー

 以前は大人の男の靴と言えば殆ど革靴のことで、私も仕事をしていた頃はずっと革靴を履いていた。家の中では靴下だけか、裸足のまま、お客さんやトイレなどにはスリッパを用意しているのが普通であった。下駄や草履などを履いていた頃もあった。

 また、子供の頃は、布製で底がゴムのズック靴が普通であった。運動靴などとも言われていたし、かがとを押しつぶしたまま履くのをズッパと言ったりしたようである。今でも地方では、学校などの上履きのことをズックと言っているところもあるそうである。

 ズックというのは元はオランダ語のDoek( ドゥーク )から来ているとかで、もともと厚手の綿や麻などの分厚い布を指すもので、ドンゴロスよりは細かい厚手の布製の袋で、ズック袋などと言われたものもあった。

 ところが最近はスニーカーという言葉が幅を効かせ、革靴以外は皆スニーカーのような感じで、スニーカーが革靴を隅に追いやる感じさえある。電車に乗って乗客の足元を見ても、革靴が減ってスニーカーが幅を利かせているのがよくわかる。

 サラリーマンでも正式な時には革靴だが、平素はネクタイなしが流行るとともに、足元もスニーカーの人が多くなった。靴屋さんも昔からのような靴屋さんではなく、ナイキとかアシックスなどといった大手のスニーカー製造会社が幅をきかし、どんどん新しい製品を宣伝している。

 スニーカーは忍び寄るのsneakから来ている名称で、恐らく革靴と違って足音も立てずに歩けるところからつけられてものであろうが、いろいろなスポーツ靴の発達などと関連して普及してきたもののようである。スポーツ靴メーカーは今ではずいぶん多種類なスニーカーを製造販売しているようで、今では革靴よりもはるかに多く売れているのではなかろうか。

 私もスニーカーのことは知ってはいたが、特になくても困るものでもないので、殆ど利用していなかったが、2〜3年前に入院した時に、室内履きにスリッパを用意していたら、娘がスリッパは危ないからと言って、その頃から流行り出したスリップインとか言って全く手を使わずに履けるスニーカーを用意してくれたのがきっかけで、スニーカーを履くようになった。

 このスリップインの靴というのは、ハンズフリー・スリップ・インとも言われ、かがとが靴滑りのようになっており、全く手を使わずに、靴を履いたり脱いだりすることが出来るので、動作が稚拙になった老人にはうってつけのものである。一度履いたら止められず、今も毎日散歩の時に利用している。

 かっては生活に必須であった革靴たちは、今は揃って靴箱に眠ったままになっている。