「もんぺ」を知らない「モンペ」

 何かを読んでいたら「モンペ」という字が目についたので、なつかしい言葉だなあと思って、何が書かれているのか確かめたら、モンペはモンペでも、最近流行りの「モンスターペアレント」のことで、懐かしさは瞬時に飛んでいってしまった。

 時代が変われば、人々の服装も言葉も変わるものである。戦時中は日本の女性で「もんぺ」を穿いていない人はまずいなかった。「もんぺ」を穿かないと戦時下の日常生活に困ったであろうし、戦争中に「もんぺ」を穿いていない人がいれば、非国民と言われて周囲から非難されたことであろう。

 もともと「もんぺ」は農作業などのためのもので、言はば、着物地で作ったパンツの様なもので、着流しの着物では働きにくいので、着物の上からそれを履いて下半身を覆い、働きやすい格好にしたものである。

 戦争を経験した我々の世代で「もんぺ」を知らない人は考えられないが、戦後八十年も経つて服装もすっかり変わった今では、「もんぺ」を見たことも聞いたこともない人がいても不思議ではないだろう。

「もんぺ」と聞いて、農作業や戦時の「もんぺ」姿をを思い浮かべる人は既に殆ど死に絶えておらず、「モンペ」すなわち「モンスターペアレント」しか思い浮かばない人が普通なのは当然のことであろう。

 時代はどんどん変わっていく。今を生きる現役の人たちが、あの暗く惨めだった戦中戦後の時代を知らないことは幸いである。平和な時代が続いた有り難さである。しかし、世界には今また嫌な戦争の匂いが立ち込め始めてきている。戦争は突然始まるものではない。二度とあの悲劇を繰り返すことのないよう、あらゆる戦争に結びつくものに反対し、平和を守っていくようにして貰いたいものである。