菊池事件

 菊池事件とは1952年7月、熊本県で発生した殺人事件であるが、被告がハンセン病だったので、刑事裁判が通常の法廷でなく、ハンセン病隔離法廷で行われ、被告人の無実の訴えにもかかわらず、1953年8月に死刑判決が下され、1962年9月に死刑執行がなされた事件である。 

 ハンセン病患者団体などはハンセン病隔離法は明らかに不合理な差別であり、隔離政策が生んだ冤罪であると長年訴え続けてきたが、死刑執行から60年近くがたった2021年4月、遺族が再審請求を行なった。

 その特別法廷では、ハンセンビュ患者の隔離が当然とされた時代であり、偏見が普通だったので、裁判官や弁護人は白い予防服やゴム長靴を履き、証拠品を火箸で扱うといった極めて強い偏見に基づいた運営がされ、男性が無実を申し立てていたにもかかわらず、当時の弁護人は検察側の主張にほとんど反論せず、十分な弁護が行われないまま、死刑が確定したのだったそうである。

 隔離された特別法廷での審理については、2020年の熊本地裁判決が、人格権を保障した憲法13条や、法の下の平等を定めた14条に違反すると初めて認定したが、一方で、当時の確定判決の事実認定を覆すようなな新証拠はないとして、裁判そのものののやり直しは認めず棄却した。

「ただ、違憲の手続きがあったとしても「直ちに再審事由があるとは認められない」とも指摘し、再審を認めるかどうかは刑事裁判である再審請求審で審理されるべきだと言及していた。今回の決定はその線に沿うものであった。

 特別法廷での裁判そのものが違憲があった上に、判決に異議を唱えているのだから、正しい裁判所で再審するのが当然ではないか。このままでは国が裁判なしに人を殺したことになるのではなかろうか。