我が家の階段

 若かった頃には家の中の階段など単なる通路で問題にもならなかったが、歳を取ると階段を上がるのも次第に苦痛になる。その上、階段は危険を伴うこともある。年寄りが自宅の階段で転げ落ちて怪我をした話を聞いたのは一人だけではない。

 我が家も二階建てで、寝室も書斎も二階だし、トイレもシャワールームも二階にあるので一日の殆どを二階で過ごしている。しかし、居間や食堂は階下なので、一日に何回かは階段を上がり降りしなければならない。

 家を建てた頃はまだ若かったので、階段のことなど気にもしなかった。二階まで何段あるのかさえ、最近まで数えたこともなかった。ただ、建築中に階段には手摺りをつけるように建設会社に頼んだことだけは何故か覚えている。階段は一坪余りの面積に折り曲がった14段に作られているので、かなり急勾配である。

 若かった頃は、せっかちな私はいつも気軽にその階段を走る様にして登り降りしていたが、年とともに一段一段踏みしめるようにして、ゆっくりしか昇降出来なくなって来た。登る時には、上の段に手をついたり、手摺りを持って、一段一段ゆっくり上がらねばならないし、降りる時には、壁や手摺りに手をついて、一段一段確かめながらゆっくり降りねばならない。

 それでも尋ねて来た保険会社の人だったかに、二階から降りて来る足音から「お元気ですね」と褒められたこともあったし、指定難病にかかって介護保険を申請した時も、自力で普通に階段昇降出来ることなどから申請を却下された。

 ただ踏み外して怪我をする危険もあるし、体力的にも負担が大きいからと、生活の中心を一階に移す案の出たこともあったが、書斎の移転は大変だし、階段の昇降が日常の運動にもなるからというこで延期になった。

 今でも1日に10回近くは階段を登り降りしているが、時には一段一段やっと登るようなこともあるが、それほど苦痛を感じたこともない。忘れ物をした時なども、若い時のように、慌てて駆け上がったり駆け降りたりは出来ないが、昇降が苦痛なために諦めるようなことはない。

 外へ行く機会がどうしても少なくなるので、今も屋内の運動、1日の歩数の確保にもなると思って、必要に応じてヨタヨタと登り降りしている。