
娘が高野山に行った時に見つけた、ユニークな化粧をしたお地蔵さんの写真である。見慣れた石を粗けづりしただけの、あちこちの道端で見られる普通のお地蔵さんと違い、色鮮やかな姿やその表情にびっくりし、本来信仰の対象であったお地蔵さんに、誰がこんな化粧したのだろうかと思った。
最近の若い人たちにはもう昔ながらの信仰心は薄らいでしまっているし、何でも可愛らしくして喜ぶ人たちが多いので、そんな誰かが悪戯をしたのかも知れないと思った。あるいは、最近はインバウンドの外国人で高野山に来る人も多いと言うから、誰かそんな人の悪戯かもとも思った。
いずれにしろ、お化粧をした、なかなか可愛らしい顔に、お飾りまでつけているではないか、一人の作品ではなく、何人かが後から後から手を加えているのかも知れない。前に置かれたお供物からしても、多くの人がこの化粧地蔵さんの前に来てこの姿を見ているに違いない。
何処にでも古い街や街道などでは、道端によくお地蔵さんを見かけるものである。通りがかりの年寄りは今でも大抵立ち寄って拝んでいくし、地域によっては、今でも地蔵盆などが夏に行われる所も多い。私はあの敗戦後、すっかり無神論者になったので、お地蔵さんには殆ど興味がなかったが、それでも、お地蔵さんは嫌というほど見てきたが、これまで化粧をしたお地蔵さんなど何処でも見たことがなかった。
しかし、他ではどうなのか見てみようと思ってGoogleで調べてみると驚かされた。私が知らなかっただけで「化粧地蔵」と引いただけで、「お地蔵さまの顔に化粧を施されたもののこと。特に顔を白く塗ったり、目や眉を描いたり、口紅を塗ったりするなど、人為的に化粧を施したお地蔵様を指す。全國的に珍しい風貌で、特に京都府や兵庫県、和歌山県などで見られ、一般的に地域の人々が子どもの健康や成長を願って行われるが、美人祈願や商売繁盛など、様々な願いを込めて化粧を施す場合もある」とある。
化粧地蔵は、子どもの守り神として、また人々の願いを叶える存在として信仰されて来たが、特に、地蔵盆の時期には、地域の人々がお地蔵様のまわりに集まり、化粧を施したり、お供え物をしたりする風習があると記されている。
高野山奥之院の参道には、口紅や頬紅で化粧された化粧地蔵があり、美人祈願に御利益があると言われているとも書かれているので、写真お地蔵さんもその一つかも知れない。私が知らなかっただけで、少なくとも高野山へ行くような人なら誰でも知っている事だったのかも知れない。そんな化粧地蔵の写真に無神論者の老人がたまたま遭遇したのだと言うことに過ぎなかったことだったのであろう。
それなら、我が家の近くの猪名川沿いのお地蔵様も、化粧しあげて、美人に仕立て上げたらどうだろうかとふと思ったのであった。