補聴器を買いました

 以前、補聴器を買おうか買うまいか迷っていたことを書いたが、結局は購入することにした。いつも散歩する圏内の近くに店があり、親切な係の人が丁寧に面倒を見てくれたので、微調整して貰ったりするアフターケアにも便利だろうと思い、そこで買うことに決めた。

 しかし、その直後にコロナにかかり入院してしまったので、買ったままになっていた。病院でも利用しようかと思ったが、充電に病室でコードを引っ張ったりするのも面倒なので、諦めて家に持ち帰って貰った。

 コロナの入院は10日足らずで済んだが、入院中、殆ど動かなかったので、九十七歳の老人は退院してから、ほぼ普通の生活の戻るまでに時間を要し、近くの補聴器屋さんまで行くのに1ヶ月近くかかった。

 ただその間も、家で補聴器をつけていたので、その取り扱いには大分慣れてきた。補聴器をつけて一番気がついたことは、歩く時の足と地面の擦れ音、小便の流れ落ちる音などがやたら大きく聞こえ気になる事であった。

 また今まで聞こえなかった音が聞こえる様になったので驚かされたこともある。窓を開けた二階の部屋で寝転んでいると、チョキ、チョキと規則正しいリズムの微かな音が聞こえる。いつもは聞いたことがないので、近くの家に植木屋さんが入って、庭木の剪定でもしているのかと思ったが、窓から外を見ても、そんな様子はない。それでも依然として聞こえる。

 気になって、何の音か調べてみると、棚に置かれた古い小さな置き時計が一途に時を刻んでいる音であった。これまで聞こえなかったのが、補聴器で聞こえる様になったのであった。

 かように一事が万事、確かにテレビの音などもよく聞こえる様になったが、人との会話や、他人同士の会話の聞き取りなどは、期待していたより以前とあまり変わらない感じだった。

 こちらの方は予めの検査でも示されていた様に、脳での聞き分けが悪くなってしまっているので、しばらく脳が新たに聞き分けてくれる様になるまで、しばらく様子を見なければ致し方ないようである。

 補聴器は小さく耳たぶの上の後ろにひっかかているだけなので、気にはならないが、その代わり、うっかりすると外すのを忘れて風呂へ入ったりすることになり兼ねない。実際に買った次の日だったかには、湯船に入ってから補聴器をしたままだったことに気がついて、びっくりして外したことがあったが、後は全てうまく行っている。

 初めはこんな小さなもので、耳に挟んだだけなので、知らぬうちに落としたりしないか気になったが、耳孔の中にまでしっかり入っているので、その心配もなさそうである。

 久しぶりで補聴器屋さんへ行って、やっと微調整して貰ったが、今はまだ靴と地面のズリ音や要らぬ雑音を気にしながら、もう少し経てば、脳の間違いも正されて、よく聞こえる様になるのではないかと期待しているところである。