鼻をほじくる

 近頃は電車の中で鼻をほじくる人が増えたという記事がSNSのどこかに載っていた。誰しも鼻をほじくったことのない人などいないだろうが、こういう他人に不快感を与えるような行為はあくまでも内緒にするもので、少なくとも大の大人が公共の場所などで公然とするものではないことは周知の常識である。

 もう隠居して電車に乗る機会も少なくなった私には、自分で本当にそうなのか確かめてみる機会も少なくなくなってしまったが、それを伝えている人によれば、電車の中でスマホを見ている人が増えたからだろうという推測が面白かった。

 なるほど、最近は電車に乗っている人の殆どがスマホを見ているか、居眠りしているかである。かってのように、イエロウ・ペーパーや週刊誌を読んでいる人は皆無と言っても良いぐらいになってしまった。皆が一斉に自分のスマホを操作しながら、脇目も降らずに何やら見ている。大勢の人が乗り合わせているのに、それぞれの人は皆それぞれに、自分だけの孤独な世界に入り込んでいるのである。

 殊に、スマホで少し長いストーリーなどに夢中になってしまうと、つい、もう自分がどこにいるのかも忘れてしまい、つい自然と、自宅ででも、自分一人だけでスマホを見ているのと錯覚してしまうのであろうか。いつもの癖で、つい知らず知らずのうちに、鼻をほじくることになるのではないかというのがSNSにこのことを書いた人の感想であった。

 なるほどなあと感心した。それでは昔だって電車の中で座って夢中で本を読んでいる人もいたのにという疑問も湧いたが、おそらく、本に夢中になっていた人はスマホほど多くなかったので、目立たなかっただけなのではなかろうか。それに、本を読むには時々ページをめくらねばならなかったし、手で本を支えていなければならないこともあり、鼻をほじくるゆとりがなかったのかも知れない。

 次に電車で出掛ける機会には、是非スマホと鼻ほじくりの関係を確かめてみたいものである。