ラッパ飲み

 もうすっかり忘れていたが、昔は「ラッパ飲み」という言葉があった。飲み物の瓶の口に直接口をつけて飲むのを指して使われていたものである。特にビール瓶に直接、口をつけて飲むのを指すことが多かったが、格好がラッパを吹いている姿に似ていることから言われるようになったらしい。
「ラッパ飲み」は外で働いた人などが、仕事を終えてやれやれして、そこらに腰を下ろして休んだような時に多く見られたものだが、一般の人たちにとっては、飲み物はやはり、グラスについでから飲むべきもので、「ラッパ飲み」は行儀の良くない飲み方とされることが多かった。サイダーやジュースなどもコップに注いで飲むように言われていたものであった。
 
 それに、ラッパ飲みは、上を向いて液体を一気に飲もうとすると、嚥下の処理能力を超えてしまうことで、気管に入りやすくなる危険もあるし、飲み口に直接口をつけるので、細菌などに汚染されやすいので、子供などには特に薦められなかったのであろう。
  ただ、当時、ビール瓶は中瓶が普通であったが、「ラッパ飲み」するには少し大き過ぎたので、そのために小瓶が出来たのだという話も聞いたことがあった。
 
 ところが最近はどうだろう。多くの飲み物は皆小さなな瓶詰めか、缶入りになっていて、それらを人々は自動販売機などで求めることが多い。殆どの人が買えばその場で、自分の口を容器に当てて飲んでいるのではなかろうか。ビールも見かけるのは缶入りばかりで、もうビール瓶を見る機会さえ殆どなくなってしまっている。
 
 それに瓶や缶の大きさも小さく、大抵は1〜2回で飲み切れるぐらいの容量で、口付けで飲むように出来ており、ビール瓶のような危険性は皆無であろうし、直接飲む方がかえって衛生的とも言えるであろう。
 こうして、今や自動販売機で求められた飲料は、ほぼ全てその場で口が開けられ、皆が昔なら「ラッパ飲み」とも言える直接口付けで飲むのが普通になっている。最早、その格好も「ラッパ吹き」とは似ていないし、いつしか「ラッパ飲み」という言葉も消えてしまったようである。
 なお、当時は「口飲み」という言葉もあり、やかんの出口、水道の蛇口に直接口をつけて飲む飲み方を指したが、小学校の水飲み場などでは、不衛生と言われ、蛇口に小さなコップを結びつけておいて、コップに受けて飲みなさいと指導されたりしたものであった。