
この3月16日の朝日新聞の「声」欄に、上のような中国から来た人の日本の役所の接客態度についての感想が載っていた。成程と思ったが、留学生でなく日本人の私でさえ、居住地の市役所に行くたびに、昔と今の役所の接客態度の大きな変化に驚かされているところである。
私が子供の頃の戦前は役所は「お上」だった。そこに用事があって行く人は「下々の者」であった。役所はその建物からして、階段を上らなければ入れないような威厳を備えた場所であることが多かった。
そんな伝統から、敗戦後、民主主義の世の中になっても、かなり遅くまで、「お上」の習慣は長く残っていた。利用者の方が「お願いします」と下手に出て、役人の方がそっくりかえって「ならば要件を聞こう」というような感じであった。
それは時代とともに少しづつ変わっていったが、今のように変わったのは、はっきりは思い出せないが、世紀が変わった頃ぐらいであろうか。その過程でのある時期、社会一般に接遇の仕方が一斉に問題になったことがあり、あちこちで接遇の専門家を呼んで、講習会などが開かれて、接客対応の仕方の改善が図られた時代があった。
病院などでも、「患者さん」と言わずに「患者様」と言えと言われた時期で、役所でもそれに応じて、市民への対応を改めようという風潮が盛んになり、接客態度が一斉に変わっていったような気がする。「相手と話す時には相手と目線を合わせて話せ」などと言われるように指導されたのもその頃からであろうか。
そんな接遇教育が盛んになった結果が今日の役所風景になっていったようである。行くたびにびっくりさせられるぐらいの変わりようである。しゃがんで話すのも相手と同じ高さになって、目線を合わせて話すべきだと教育されているからであろう。
私が見ている範囲でも、市役所などでの市民に対する接遇態度はこちらが気恥ずかしくなるぐらい良くなったが、何処かあまりにも教条化し過ぎな感じがしないでない。もう少しそれぞれに、その人らしい自然な対応の仕方の方が良いのではなかろうかと思うことがある。