また秋の文化の日がやってきた。今年は猛暑の日が長く続き、また10月末の台風の影響で、2日の土曜日には猛烈な雨が降ったが、3日になると嘘の様に良い天気となった。毎年11月3日は明治節と言われていた戦前から、ずっと晴れと決まっているようなものだった。例外は日本が戦争に負けた前年の昭和19年だけだったのではなかろうか。
それはともかく、気候は良いし、3連休ともあらばどうしても、足を伸ばしてどこかへ行きたくなるところである。向かえの夫婦もどこか旅行に出かけた様である。ところが96歳ともなると、体がいうことを聞かなくなる。せめて昨年は中山寺へ行って、そこから巡礼街道を山本まで歩いているが、もう今年はそれも無理である。
今年の夏の間にずいぶん体力が落ちてしまい、毎日の散歩の距離もぐんと短くなってしまった。もう梅田まで行っても、昔の様にあちこち歩き廻るわけにはいかない。文化の日でも、気軽にどこかへハイキングに行ったり、美術展を見に行ったっり、音楽を聴きによく行ったりというわけにはいかなくなってしまった。
仕方がないので、今年は家から近い池田市内でやっていた文化の日の催しを覗くことにした。2日は激しい雨でせっかく予約していた音楽会をキャンセルせざるを得なったが、3日には池田小学校の体育館で行われた「メープルリーフコンサート」を聴き、4日には中央公民館のホールでレコード音楽を聴きに行った。
いずれも地方の趣味の音楽クラブの会の様なものだが、コンサートの方は、ジュニア合唱団から始まり、混声合唱団と続いたが、出演者は案の定 女性が多数で、男の方は音楽好きな老人ばかりと言った感じ、杖をついて登壇し椅子に座ったままの人もいた。
内容はどことも同じ様なもので、古い民謡などが多かったが、それらを聴いていると、つい昔を思い出して懐かしく思ったが、ひょっこり、その歌を歌った頃の戦前の世界の雰囲気が脳裏に浮かび、嫌な感じがしてきた。戦後に「大日本帝国での忠君愛国の世界」を全否定してやっと生きてこられたのに、子供の頃の雰囲気を思い出させる様な感じに悩まされた。
次いで、オカリナクラブの演奏があったが、30人ぐらいの人が一斉に吹くと、オカリナでも結構迫力が出て聴かせるものだなと感心させられた。
またダイハツの同好会の「ダイハツブラスバンド」や「呉服おとな吹奏楽団」の吹奏楽もあったが、後者は呉羽小学校の卒業生が中心だが、音楽で何度も名をあげていた小学校の卒業生たちの集まりだけあって、最後を飾るにふさわしい演奏で、ダイハツの同好会のそれを上回っている感じであり、総じて結構楽しませてくれた。
次の日は公民館の大ホールで、近くに住む関学出で京都放送?に勤めていた80歳後半の音楽好きの人のレコード鑑賞会で、昔の「ラッパと犬の」コロンビアの蓄音機から、戦前の大型蓄音機、戦後のコンパクトな蓄音機などのコレクションを並べ、それらによるビングクロスビーやシナトラから、リコーラン、宝塚その他の古い音楽を次々と古い蓄音機で聞かせてくれ、竹のレコード針など昔懐かしいものも見せてくれた。
池田小学校も公民館も駅のすぐそばで途中で休まなくとも行ける距離で、96歳の老人でも疲れずに行けたので、まあまあ文化の日を歳並みには楽しませてくれたと言えるのではないだろうか。