介護職員を優遇せよ

 高齢者への介護職員らによる虐待が過去最多を超したという記事が少し古いが、いつかの新聞のおピニオン欄に載っていた。

 障害者支援施設相談業務をする人の声であったが、こう書いていた。「虐待した職員に、虐待という認識があったかどうか。人は余裕がなくなるとイライラし、虐待につながる。別の人の介護と重なった時など、一人で処理しなければならなくなる。時間をかけた対応が出来ない。精神的な余裕をなくし、命令口調になったり、言葉がキツくなったりしかねない」

 虐待とまで行かなくとも、同様な体験は子供を育てた女性や、親の介護を経験した人であれば、誰しも心覚えのあることであろう。それにもかかわらずというか、それなればこそ、エッセンシャルワークである介護が家事の延長として、労働の価値を低くしか認められない傾向が強いのが残念である。

 厚生労働省の担当官は職員の研修を充実させる必要があるといっていたが、介護の仕事の実態を知り、もっと人員配置を厚くし、賃金水準を上げて、職員の働く意欲を高めることが必要であろう。高齢化社会で人口は減少し、労働人口の不足が問題になっており、社会的な労働力を確保するためにも、介護労働は今後ますます必要性を増すエッセンシャル労働である。

 もっとエッセンシャル労働を労働として評価し、それ相当の人員配置や報酬を顧慮しなければ、健全な社会の発展そのものが歪められてしまうであろう。

 ところが、現在の社会では、それに対して、不要な仕事としてのいわゆるBull Shit Jobsの方が高く評価され優遇されているような事実さえある。社会全体の労働力の配分やそれに対する評価や報酬は今一度基本的に見直す必要があるのではなかろうか。

 

註: 因みに、エッセンシャルワーカーとは「生活を維持するために必要不可欠な職業」のことで、一般的には以下のような職業を指している。

  • 医療・介護福祉・教育・公務員など公共サービスに関わる職業
  • 電気・ガス・水道・通信など生活インフラに関わる職業
  • 物流・小売・販売など生活必需品に関わる職業

これに対してBull Shit Jobsとは

1. 取り巻き[flunkies]

  誰かを偉そうに見せたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在してい  

  る仕事。例えば、受付係、管理アシスタント、ドア・アテンダント

2. 脅し屋[goons]

  雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素を持ち、そのことに意味が感じら

  れない仕事。ロビイスト、顧問弁護士、テレマケッテング業者、広報スペシャ

  リストなど、雇用主に代わって他人を傷つけたり欺いたりするために行動する悪党。

3. 尻ぬぐい[duct tapers]

  組織のなかの存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事。

  たとえば、粗雑なコードを修復するプログラマー、バッグが到着しない乗客を落ち

  着かせる航空会社のデスクスタッフ。

4. 書類穴埋め人[box tickers]

  組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事。

  たとえば、調査管理者、社内の雑誌ジャーナリスト、企業コンプライアンス担当

  者など。役に立たないときに何か便利なことが行われているように見せる。

5. タスクマスター[taskmasters]

  他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブを作り出す仕事。

  中間管理職など。

 

 

 

 

 

 

どのような仕事かといえば、彼は以下のような五つ種類を挙げげている。