駅での待ち合わせ

 以前はいろいろな駅で、いろいろなことで、いろいろな人達と待ち合わせることも多かった。しかし、年をとって仕事も辞め、古くからの友人たちも、あらかたいなくなり、電車に乗って何処かへ行く機会も減ると、自宅から5分ほどの駅も次第に遠くなる。

 そんなこの頃に、久し振りで知人を迎えに駅に迎えに行く機会があった。トライウオーカーなる歩行補助器を押して行き、早めに駅に着いたので、改札口の前の廊下のベンチに座って待つことにした。

 もう昼前の時間帯だったのでラッシュアウアのような混雑はなかったが、それでも思ったより人通りがあった。時間的にもうサラリーマンはもう少なかったが、営業マンだろうか、この暑さの中を背広にネクタイまでして歩いて行く二人組がいた。昔ならこれがサラリーマンの制服だったが、流石に今は殆どの人が上着なしの、決まったように白いワイシャツ姿である。

 昔ながらの定番の扇子で仰ぎながら改札口を入って行く人はいなくなったが、最近のサラリーマンはリュックを背負った人が多い。白シャツにリュック姿なので遠くから見ると、学生のようで、学生かなと思っていたら髭ズラの中年の男性だったりする。関西では阪神淡路の震災の後から急にリュック姿が増えたようである。

 また今は夏休み中なので子供づれも多い。子供は元気である、駅の通路でも親から離れて走ったり、スキップしたりして、前へ行ったり後ろへ行ったりしながら着いていく。

子供は本当に疲れ知らずである。

 しかし、何といっても今頃の郊外の駅は老人が多い。杖をついた人や、買い物車や歩行補助具を押した人、脳障害のためか一歩一歩ゆっくりとしか歩けないような人もいる。中には殆どもう九十度近くまで体が曲がっているのに杖もつかず、何やらぶら下げてヨタヨタ改札を入って行く人もいる。あんな格好で何処まで行くのだろう。大丈夫かなとこちらが心配になるような人まで通って行く。

 そんな人々を見ているうちに一人、すらっとした若い女性が颯爽と改札目掛けて歩いて行くではないか。その歩く姿の格好の良さ。思わず見惚れる。昔なら私もそれ程でなくとも、颯爽と歩いて改札をさっと通ったものなのになあと、一瞬羨ましく昔の我が身を思い出す。

 次々と行き交う人たちは絶えず、その動きを見ているだけでも興味は尽きず、瞬く間に時間が過ぎてしまい、そのうちに大勢の人たちが改札口から溢れて出てくる中に、約束の人を見つけて近寄り、声をかけることになった次第である。通りがかりの人たちの観察も結構興味深くあきないで眺めてられるものである。