佐伯祐三展

 大阪中之島美術館で佐伯祐三展をやっているので見に行ってきた。この画家は丁度、私の生まれた1928年に30歳の若さで夭折しているのだが、生まれが大阪で中津の寺の息子であり、私の出た北野中学を卒業しているので、私の先輩にもあたるのである。昔、北野の校長室に、この画家の絵が飾られていたような気がしているので、ひょっとしたら、今でも北野高校の校長室?にでも、遺作が飾られているのではなかろうか。

 それはともかく、佐伯祐三は古くから私の好きな画家の一人で、馴染みのある画家でもあるので、展覧会が開かれるのを待ち焦がれていたのである。ところが行ってみると、この中之島美術館は世界一のコレクションとしてこの画家の絵の蒐集しているようで、お蔭で、佐伯祐三という画家の、学生時代から死ぬまでの一生を系統的に追って見られる、中々立派な展示で、思いの外、多くの絵を見ることが出来た。

 初めの頃の自画像や日本の風景画などにも、才能の閃きのようなものを感じる作品もあるが、この画家の真骨頂はパリへ行って自分の自信作をブラマンクに「この、アカデミック」と徹底的に批判され、以来、絵の具までブラマンクのような暗いものを沢山揃へ、一時はブラマンクを真似たような絵も描いているが、そのうちにブラマンクや、パリの建物などをよく描いていたユトリロの絵などをも乗り越えて、自分の絵を作っていった所であろうが、そういった過程がよく分かる展示であった。

 夭折するまで随分沢山の絵を描いているようだが、やはり二度目にパリへ行ってからの短い期間に描いたのであろう、郵便配達夫や靴屋の外観、ガス灯と広告、カフェ・レストラン、ロシアの少女などの作品は、これまでにも何処かでお目にかかったものが多かったが、やはり、何度見ても強く惹かれて印象深かった。

 荻須高徳も多くのパリの街角の風景を描いていて、随分沢山見てきたが、同じパリの街角の建物を描いているのに、何故、佐伯の作品により強く惹かれるのだろうか。何処が違うのか。以前からいつも感じさせられるのは、佐伯の作品には常の人とは異なる、独特の筆致の鋭さ、切れ味の良さとでも言えば良いのか、何か鋭い感性のようなものを感じるのである。決して荻須の絵がまずい訳でなく、荻須も佐伯の死ぬ前にヴィリエ・シュル・モランとかいう村へ一緒に行っている仲間であり、それなりに評価されている画家なのである。

 普通の優等生の作品と、何処か人智を超えた天才の閃きとでもいうものとの違いであろうか。そういえば、佐伯祐三にも、私の好きな天才画家で、同じように若くして亡くなったゴッホエゴン・シーレと何か共通点のようなものを感じるのである。