ラテンアメリカの民衆芸術

 千里の民博で「ラテンアメリカの民衆芸術」の特別展をしていたので見に行ってきた。

 ラテンアメリカのアートについては、もう随分昔のことになるが、娘がメキシコに留学していた時にメキシコを訪れたことがあり、また、その後にも下の娘がサンディエゴに住んでいたことがあり、その頃、越境してメキシコを訪れたたこともあり、懐かしい感じがするのである。

 日常生活の中でも、タンゴやルンバの踊りや音楽、リオのカーニバル、マヤのピラミッドやマチュピチュの遺跡、種々のサボテンは馴染み深いし、食べ物でも、トルティーヤやタコスにアボガドなどは日本でもポピュラーである。

 絵画であれば、シケイロスリベロの巨大な壁画、両眉のくっついたフリーダ・カーロの顔などが目に浮かぶし、戦後の時代に見た、北川民次の力強い絵も忘れられない。絵画を離れても、メキシコの人々の生活の中に流れる文化は、町並みといい、衣装や食べ物などに至るまで、アジアでもない、ヨーロッパでもない独特の文化が魅力的である。

 ラテンアメリカの文化の特徴は、マヤやアステカの時代から続く原住民のオリジナルな文化に、スペインの征服者が持ち込んだ文化が重なり、それに更に西欧人より多くなった黒人奴隷の子孫たちのアフリカ文化がミックスされて、独特の文化が出来上がったもののようである。

 今回の展覧会は民衆芸術ということであり、民博が長年かけて収集したラテンアメリカの色々な地方での衣装や着物、日用品や工芸品、絵画やポスターなど広範囲に及ぶものであったが、過去の民衆の息遣いまで感じさせられるような展示も多く、ゆっくり見て廻って十分楽しめた。

 ラテンアメリカ特有の、濃密な色濃い表現が至る所に現れており、それらが激しい歴史の変遷の中で、色々な影響を受けながらも、逞しく継承され、生き続けてきた様子を想像させてくれるものであった。