ルイヴィトンでのジャコメティ展

 ジャコメティの展覧会の案内を見たので早速行ってみたいと思ったが、開催場所が心斎橋のルイ・ヴィトンとある。心斎橋の大丸の南のあたりにルイヴィトンの新しいビルが出来ており、その上の方の階でやっているようである。

 ジャコメティと聞けば、ぜひ見に行きたいと思うが、ルイヴィトンと聞けば、入りにくいのではないかと言う思いが頭をもたげてくる。こう言う高級宝飾店のような所は平素は用がないし、店の前を通っても何か近づきにくい感じがして、これまで殆ど覗いたこともない。

 いつも美術案やギャラリーへ行く時のようなラフな格好では、ちょっと具合が悪いのではなかろうかと思ったりする。それでも、ジャコメティの美術展なのだから、色々な人が来るだろうから、あまり服装など気にすることもないのではないかなどと思案した挙句、やっぱりジャコメティは見たいのが勝って、普段の格好のまま出掛けた。

 新しいルイヴィトンのビルは初めて見るが、前面に大掛かりな竹細工のようなファサードをつけた洒落たビルであった。入り口はどうも入りにくそうな感じであったが、ドアのすぐ奥に女性が立っていたので、入って尋ねてみると、そばにいた別の男性が「ご案内します」と言って、会場に行く別の入り口の奥のエレベーターの所まで案内してくれた。

 エレベータを5階で降りると、いきなり広い空間の部屋になっており、そのフロアが展覧会場であった。まずは巨大な例の頑丈で針金を絞ったような細い作りの黒い人体像が立っている。その後方には、やはり同じような特徴の細い人体の三人組や、一人の坐像、傾いた頭部、その他5〜6点の彫刻が散らばるように展示されていた。

 ジャコメティ特有の、あの極端に細い体躯ながら顔貌も、個性を表し、微妙な体の屈曲が人体の自然な動きになっており、何度見ても、やはり何か惹きつけられるものがあって飽きないのはさすがと言わざるを得ない。

 さらに奥の部屋ではジャコメティの生涯を説明した映像が流れていた。ジャコメティについては、そこに並べられているような細い人体の彫像の印象が強く、これまで、この人の他の面については、あまり注目したことがなかったので、この映像が興味深かった。

 モデルを使った人体のデッサンの彼独特の描写場面、その描き方、出来上がった作品の素晴らしさ、若い時からの遍歴の歴史もわかり、比較的長い映像であったが引き寄せられてみることがbできた。彫刻も特徴的とも言える飾られてもいる人物像の他に、以前に作られたモダーンで抽象的な彫刻などについても知ることが出来た。

 十分楽しんだ見終わった後、帰る前にトイレに立ち寄ったが、さすが、ルイヴィトンの店。トイレの中まで、他とは違った豪華さを示していた。