最近は何処へいってもいわゆるIT化が進んでいる。スーパーへ行ってもコンビニへ行ってもセルフレジとかで、商品のバーコードを機械に読み取らせ、お金を機械に入れて釣り銭を取り、出てきたレシートをとって、一件落着ということになる。ところが場所によって機械や手順が微妙に違っていることが多い。
これまで、レジの人が対面だったので、選んだ商品さえ出せば、あとは全てやってくれたので、お金だけ出せばよかったが、機械は何も言ってくれないので、客が全て操作しなければならない。操作を教えてもくれないし、操作を間違えれば、黙って相手をしてくれないので、取り付く島もない。折角、買い物をしてやったのに、おし黙ったまま、支払おうというのまで拒否する。
こちらが老人なので、大抵は近くにいる店員さんがやって来て助けてくれるのでことが進むが、人が誰もいなくなると、商品は買ったものの支払いが出来ず、黙って帰るわけにも行かず、そこで立ち往生してしまうことになり兼ねない。
慣れた人にとっては何でもないことだが、機械の扱いに弱く、慣れない老人には厄介な関所となる。店により、店の種類によって、レジも微妙に違うから困る。それに、最近はカードでの支払いや、カードを使えば割引があるとか、ポイントがつくとか、色々支払いもややこしい。色々なカードがあり、どれが何処で使えるのかも複雑である。こちらの財布に入ったカードを見て、これが使えますと教えてくれることもある。そうかと思えば、使えるはずのカードが使えないこともあってややこしい。
それもどんどん変わっていくから、ついていくのが大変である。挙げ句の果てには、こちらが画面やキーボードに打ち込まなければならないこともある。ぽちぽちとキーを押しては間違い、またやり直し。そんな所で次にパスワードは?などと言われても、こちらはこの場合は、どのパスワードだったのか、容易に思い出せない。当てすっぽうに思いついたパスワードを入れたら違っていて、それ以上に進めない。
買い物をするだけでも、老人は生きにくい。店の人が見るに見かねて、代わりに入力してくれるのを見ていると、何と素速くキーが打てることか、忽ち入力が済んで用が終わる。最早この年では練習しても、あんなに速くキーを叩けるはずもない。
スマホで送金、買いものもスマホ。支払いもスマホの時代である。Lineに登録すれば割引があり、ポイントで飲み物のサービスがある。図書館で本を借りるのも、予約本の受け取りをするのも機械でする。老人の知らない所で色々なことがどんどん進んでいる。
老人は折角バーコードを知っても、繋がった後、そこから先どうするのかわからない。文字の入力を一本指でしているようでは、どうして良いか分かっても、ついて行けない。
それでも、九十五歳の当方はもうやがていなくなるだろうから、心配することもなかろうが、今後どうなっていくことだろう。小学校からIT授業が始まり、すべての子どもがプログラムを組むことさえ出来るようになるらしい。ITが正式学科となり、プログラミングが出来なければ、高校も卒業出来ないことになるようである。ITが出来ないと、まともな仕事にもつけないことになるであろう。
会社でも、リスキリングと言って、従業員のIT教育をするらしい。世の中の人が皆ITを自由に操作できる様になると、各自が自分に都合の良いプログラムを作り、それを用いて物事を動かすようになっていけば、どんな世界が広がるのだろうか。もうとても老人にはついていけない世の中になりそうである。それまでに消えた方が良さそうである。