ひどくなった機能性食品の広告

 最近のテレビを見ていると、コマーシャルがやたらと増えて、番組との境界さえはっきりしない場合もあり、ついチャネルをNHKに変えたり、テレビを消してしまいがちである。

 そのコマーシャルもまたひどいものが多くなった。まるで詐欺まがいの視聴者を欺くようなコマーシャルが多い。殊に、老人相手の機能性食品と言われるような、健康に良い、老化を防ぐ、足腰の衰えによく効くなどといった類の、薬とも食品とも言えないような部類のものの広告で、まるでそれだけ飲んだり食べたりすれば問題が全て解決するかのような誇大広告である。

 これらの広告主は人間の体をまるで玩具の人形のような単純なものと考えているのだろうかと疑いたくなる。宣伝元と、広告会社が儲かりさえすれば良く、それを飲む人のことを本当に考えているのか怪しくなる。それに乗せられる方が悪いと言われるのかも知れないが、中高年ともなれば、誰しも日常生活を妨げがちな弱みを持っているものである。何とかこの悩みを解決したいものだと、藁にも縋りたい思いを持っているところに、甘い誘惑の声がかかれば、ついそれに乗せられることになるのを非難するわけにはいかない。

 薬でもない、機能性食品とでもいうべき、食品と薬の間のような品物を健康と結びつけて、弱みを持った人々に売りつけようとする広告が酷すぎる。どう考えてもその品目で宣伝されているような効果が考えられないようなものまで、まるで視聴者を欺くような目を覆いたくなるような広告まで流されている。

 それをまた真に受けてなのかどうかわからないが、普通の食事の他にこういったものを何十種類も飲み続けている人が実際にいるから恐ろしい。

 食品でもない薬でもない、その中間のようなものは、多くは不要な金銭を投じても、目的が達せられることなく、毒にも薬のまらないものが多いであろうが、多くのもの一緒を飲んだり食べたりすると、どんな副作用が出るか不明な点も多い。

 人体には巧妙な解毒作用も備わっているが、それにも限度がある。人の弱みに漬け込んで不要な金銭を払わせ、効果があるどころか副作用の心配もありうる様なものを売りつけることが社会的に公正な行為と言えるだろうか。

 食事や生活の注意を守れば十分健康状態を維持出来るものを、怖がらせられて不要なものを飲んだり食べたりさせれることにもなりかねない。恐喝や詐欺に近いとも言えるのではなかろうか。

 多くのそういったものを一緒に摂ることによってポリファーマシーに近いことだって起こりうるであろう。しかもそういったことに対する注意の喚起や警告などは一切ない。全てが効果の宣伝はあっても、過剰摂取や複合摂取の場合などの注意の喚起もない。

 朝日新聞2022.9.9.に「長期政権からの宿題」として、消費生活コンサルタント森田満樹さん

のこういう機能性表示食品に関する記事があったが、それによると、アベノミクスの第三の矢、規制緩和による経済成長戦略の一つとして、政治主導であっという間に設立され、消費者の利益のためというよりも経済のための制度であると言われる。

 特定保健用食品(トクホ)は国が審査し許可するのに対し、届け出だけで機能性表示が可能となり、大幅に規制緩和されたものらしい。トクホは許可にあたり製品そのものを人間に投与した試験が必要だが、機能性表示食品ではヒトの試験を行わなくとも、機能性に関する成分の文献評価でも良いとされており、約2600点の商品が販売中だとか。市場規模はトクホを上回っており、届け出時に情報を公開しているが、一般消費者が容易に内容を読み解けるものではない。市場で不適切なもののチェックを行政が行うとされているが、監視が行き届いているとは思えないと言われている。

 こう言ったものは、長い目で見れば国民の健康に影響を与えるものであり、国民の健康問題を無視して経済優先で国民に押し付けても良いものであろうか、問題のある広告が多すぎる。

認知機能に関わる商品のインターネット広告のうち六割近くが法令違反の疑いを指摘されたそうである。届け出をした機能性の範囲を逸脱した表現をするなど問題のある広告が数々あるとも言われている。

 国民の健康を守るためには、広告のみに止まらず、トクホ、機能性表示食品、栄養機能食品を含め、保健機能食品制度全体を見直す必要があるのではなかろうか。