世界の夢 見果てぬ夢

 この二、三年、コロナが世界中に広がってなかなか収まらないため、全ての国が多かれ少なかれその対策に困っている。現在の世界は多くの国に分かれており、その各々が主権を持っているので、同じコロナに対する対応の仕方も国によって異なり、その感染率や死亡率の数だけ見ても国によってまちまちである。

 コロナのウイルスの方は人間社会の分断などにはお構いなしに拡がるので、国際間の人々の交流が多いほど、たちまちのうちに世界中にその感染を広げてしまう。最早、人間社会がコロナの立ち向かうには、国別でなく、世界中が一つになって統一した対策を一斉に講じるのが一番有効なのであろうが、まだまだそこへ行くには時間がかかるであろう。

 コロナ問題以外でも、経済的にも、社会的にも世界中の交流が盛んになり、世界中の国が貿易を介してお互いに大きく依存し合ってしまっている。日本など貿易が止まればたちまち干上がってしまう。この度のロシアに対する経済制裁にしても、ロシアに対する制裁の影響だけでなく、制裁をした側も、跳ね返ってきた影響を受け、世界的な問題となる。

 また産業規模が巨大化して、地球環境に及ぼす影響も今では無視できないレベルとなって来ている。その結果の現実として、地球の温暖化、水面上昇、異常気象の多発などが見られ、人新世と言われる時代となり、SDGs、CO 2削減などが叫ばれるようになって来ている。この夏の40度Cに近い異常高音もそれに関連しているのであろう。

 人類活動の結果としての自然の地球規模の変化が、今や人々の社会的な恒常性を遥かに超えてしまっていることに気づき、その対応を考えねばならない時である。もはや、国単位では十分ではなく、嫌でも 世界が一体化してその対策に当たらなければならない時代になって来ているのである。

 にもかかわらず、人間社会は未だに有効な人類社会としての一致した対策を打ち出し得ないでいる。世界的な交流の発達により、世界中の人々の服装や日用品が一様化してきていることからもわかるように、今や地球上のすべての人々の社会的な文化や生活様式なども共通化して来ている。

 それにもかかわらず、人類社会は今なお人々が古い地方主義、割拠主義から抜け出せず、経済や社会の人々の格差は大きく、政治的な共通項さえ見出し難く、国連や国家間の協力もあるにはあるものの、有力国の力による競合で、世界が一致した対応を取るには程遠い有様である。

 世界中の国家が消滅し、世界共和国が出来るのは今なお遠い理想に過ぎず、今なお領土、国民、主権を基本とした国単位の権力争いが絶えない現状では、人類社会としての統一した対応が出来る体制はまだ遠い未来である。未だ原水爆など核兵器廃止=管理さえ出来ず、戦争も消滅せず、一国の利益、大企業の利益より、世界の八十億の人々の共通の利益を優先させることも出来ていない。

 政治にしても、経済にしても、万人の平等 公平 格差のない自由な民主主義社会であり、「万人がそれぞれの能力に応じて働き、必要に応じて受け取る世界」が理想であろうが、人類は物理的、経済的には、その規模や能力からもそれを可能にしながら、社会的にそれを阻んでいるのではなかろうか。

 世界の人類の科学や産業の拡大進歩により、今やそれが可能となっているのに、その分配の仕方に失敗し、社会的な分裂や格差、争いを乗り越えられず、恣意的で統一を欠いた乱開発に自らの生存基盤である地球を台無しにしかけているのである。

 人類の歴史も永久には続かないであろう。その前にこの理想が果たして実現するであろうか、見果てぬ夢で終わるかも知れないと危惧せざるを得ない現状である。