日本の人口ピラミッド

 

 たまたま日本の人口ピラミッドを見ていると、上図のように、65歳以上が黒く塗られ、64歳から15歳が灰色、14歳以下が格子模様に塗り分けていて、おまけに男女の印までついており、丁度左右に男女別の人の横顔に見えて興味をそそられた。帽子を被った男女の横顔に見えるではないか。

 ところが、これは昨年度の分であるが、この国の人口動態からも容易に想像できる様に、この百年ばかりの間にこの日本の人口構成も激変し、ピラミッドもすっかり形を変えてしまったのである。

 我々の子供の時に教えられたのは、日本の人口は大まかに言って、毎年200万人生まれ、100万人死んで、毎年100万人づつ増えるということであって、人口ピラミッドは綺麗な山形を示していた。見ただけでもどっしりと安定していて、なるほど、こうして日本の人口も増え、国も発展していくのだなあと思ったものであった。

 ところが、その安定したピラミッドは長くは続かなかった。不幸な戦争を象徴するかのように、日中戦争や太平洋戦争で大きな歪みをきたし、その後は急速にその姿を変えていってしまったのであった。そのきっかけとなった戦争による戦死者によるピラミッドの歪みは、77年後の今なお大きな傷跡を残している。

 戦後は、戦争の反動によるベイビーブームで、一時的に急に人口も増えたが、やがては戦後の貧困や民主主義などが絡み、次第に出生数が減ることになっていった。その頃の出生児が今ではもはや65歳となっており、そこまでが図では帽子の部分に当たる。

 その後再びベイビーブーマーの2世で出生率は少し増えたが、1970年の大阪万博頃を境に、その後は徐々に確実に出生減が続くこととなり、最近では戦前の死亡者数の100万人をさえ切る、出生者数80万人台にまで減ってしまっている。もはや人口ピラミッドも安定どころか、頭でっかちなキューピー人形が立っている様な格好になっているではないか。

 しかもこの傾向は今後も確実に続いて行きそうなのである。この分では2050年頃には、出生数が50万人も切ってしまいそうで、今でも足元が小さく不安定な人口ピラミッドは、益々足元もおぼつかない頭でっかちでスリムな危なかっしい格好になってしまいそうである。

 移民にでも助けてもらわない限り、足元の人口以上にピラミッドの横幅が増えるわけがないのだから、将来が心配である。先のことなので、未だ関心が薄いが、このままだと、日本人はやがてこの世から消滅してしまそうでもある。

   公園に子等の声なしこどもの日  埼玉県 鈴木清三(朝日俳壇2022.6.5.)