電動自転車

 最近の若いお母さん達が、子供を幼稚園や保育所に送っているのを見ると、殆どの人が自転車に子供を乗せて連れて来ている。車は小廻りが効かないし、道を塞ぐ。手をとって歩いて来るには時間がかかり過ぎる。自転車ぐらいが一番手っ取り早いのであろう。

 つい何年か前ぐらいには、普通の自転車の前と後ろに子供を乗せた3人乗りの危なっかしい運転で、事故を起こしたりして問題になったことなどもあったが、今や自転車も良くなったのであろう。若いお母さん達は殆どの人が、それ用に造られた電動付き自転車を利用しているようである。

 電動なので馬力があり、少々重くても構わないので、前や後ろの子供用の席は殆ど幌で覆われているし、子供を乗せていても坂道でも、楽々と上がって行く。前と後ろに二つも幌のついた3人乗りの自転車も見かける。

 昔と比べて、ずいぶん楽になったものである。以前の普通の自転車では、後部の荷物台と、場合によったら前のサドルの前にくっつけた子供用の椅子にまで子供を乗せて、お母さんが坂道を息を切らし、汗びっしょりになって自転車を押して登って行く姿などが見られたものだが、電動なら、かなり急な坂でも子供を乗せたまま、スイスイと上がって行ける。

 私は歳をとってから、もう自転車に乗っていなが、足が悪くなり、遠道が疲れ易いので、それを見て、電動自転車を買ってはと思ったこともあったが、どうも慣れないと危ないらしい。最近は低床の三輪車で電動補助のあるのも売り出されているようだが、それでもやはり車道を走らなければならないので、危険だと言われて諦めた。

 その頃、電動自転車の値段を見たらホームセンターで15万円ぐらいしていたので、最近のお母さんたちは、子供を保育園や幼稚園に預けるために、自転車だけでもお金がかかるのだなあと思ったものであった。

 ある時、猪名川の河原公園で子供を連れたお母さん達が4、5人集まって、ピクニックの様に子供を遊ばせながら集まって楽しんでいたが、その近くにはお母さんの数だけ、幌のついた電動付きの自転車が並んでいるのが見られた。

 また、いつだったか、幼稚園の前を通ったら、退け時分だったのか、それとも何かお母さんの集会でもあったのか、垣根の外の道路に、お母さん達の自転車が20台以上も、整然と並べられていたが、見るとそれらは全て電動付きの自転車であった。もう今時はバッテリーのついていない普通の自転車などで子供の送迎などは、恥ずかしくて出来ないのではないのではなかろうか。

 最近は子供送迎用の自転車ばかりではなく、普通の自転車でも電動付きのものが多くなってきた。駅やショッピングセンターなどに停めている自転車を見ても、電動付きのものが多くなった。ただ駐輪中にバッテリーだけ盗まれるような事故もあるようである。

 それでも電動のあるなしの違いは大きい。坂道が多い池田などでは殊にそうである。外から見ているだけでも、違いは歴然としている。坂道で自転車を降りて、息を切らしながら自転車を押して上がるのと、電動でスイスイと上がれる違いは大きい。

 坂の上に住んでいる年寄りなど、車の免許を返納した後などには、電動自転車があれば随分違うのではなかろうか。買い物に行くだけでも、手ぶらの下り道は良いとしても、買い物をぶら下げて坂を上って帰る時には、全然疲れ方が違うのが分かるであろう。ただ車の運転が怪しい歳頃には、電動自転車も危ないかも知れない。

 ある時、猪名川の河原公園を散歩していたら、ある区画で老人達がゲートボール押していた。どこかの地域の大会ででもあったのか、かなり大勢の老人が競技をしていたが、そのホームベースに近い所に老人達が乗って来た自転車が何十台も停めてあった。ところが見ると、幼稚園の前とは反対に、電動バッテリー付きの自転車は一台も見当たらなかった。

 電動自転車は今でもまだ若い人達のものの様である。力の衰えた老人こそ電動自転車が助けになるであろうが、老人は新しいものには縁が薄いためか、危険だからか、老人で電動自転車に乗っている人はまだまだ少ないようである。