奇妙な新聞の見出し

 5月18日の朝日新聞の一面見出しを見て首を傾げた。大きく「製鉄所ウクライナ撤退命令」「マリウポリロシア完全制圧へ」と書かれていた。核攻撃に備えて作られた地下要塞のような製鉄所の地下に立てこもって、長らく抵抗していたいたウクライナのアゾフ大隊がついに降参して、ロシアが製鉄所をやっと占領したということらしいが、それをどうして新聞社ともあろうものが、こんなに分かりにくい表現を用いるのであろうか。

 普通なら「アゾフスターリ製鉄所陥落・マリウポリ ロシア完全制圧へ」とでも書くべきところではなかろうか。

 日米戦争で日本軍が負けていた頃の報道を思い出し、嫌な気持ちにさせられた。当時の新聞は、負けて陣地を奪われ逃走したのを「転進」と言い換え、全滅したのを「玉砕」と書いて美化しようとしたものである。日本軍の敗戦を隠すために言い換えをして、国民に少しでも負け戦を隠し、ショックを和らげようとしたのでろうが、今回は他所の国と他所の国の戦いについてである。

 ロシアの侵略がけしからんと言ってアメリカはじめヨーロッパの各国が一致して反対し、日本もそれに同調しているので、戦争のニュースも、そちらから流れてくるものが主になっているから、元のニュースが負け惜しみのような表現になっているので、それに習ったのであろうが、第三者である日本の新聞はもう少し客観的な冷静な表現をすべきではなかったろうか。

 記事には「ウクライナ兵の退避が始まり、260人以上がロシア側に移送された。ウクライナ軍側は任務の完了を報告し、兵士に撤退を命じた。・・・」などと書かれていた。どう見ても降伏したことが明らかである。占領とか敗退とかはっきりわかる言葉もあるではないか。

 偽情報が飛び交わっている今こそ、アメリカはじめ西欧の報道をそのまま流すのではなく、一旦受け止めて、日本の新聞社なりの客観的な報道をしてほしいものである。