滋賀県立美術館へアール・ブリュット(Art Brut)の展覧会を見に行って来た。アール・ブリュットとは、美術の専門的な教育を受けていない人が、湧き上がる衝動に従って自分のために制作したアートのことを指す言葉だが、日本では、そればかりではないと言いながらも、知的障害者の制作する美術を指すことが多く、今回も殆どの展示が障害者施設などでの作品で占められていた。
アール・ブリュットは滋賀県などをはじめ、日本の障害者施設で熱心に取り上げられてきた歴史があり、海外での高い評価を受けている作品もあり、知的障害者の作った特別な作品という概念だけでは捉えきれないものがある。障害者であるかどうかを秘してみても、非常に興味深い心を惹かれる作品も多い。
中でも、自閉スペクトラム〜アスペルガー症候群と言われる人たちが注目されて来ている。原因はまだはっきり分かっていないが、知的障害は伴わないが、毀誉褒貶の対応が取れず、他人との関わり方がうまく行かない事が多く、例えば「集団に合わせた行動」や「柔軟に対応する」ことは不得意だというような特徴を持っているが、反面、反復的な行動に興味を示し、同一性へのこだわりが強い事が多く、それがかえって「一人でいること」や「決められた手順を守る」という強みにもなる場合もある。
そのため、一人でコツコツと定例業務に取り組むような環境であれば、その人の得意を生かし易くなることにもなり、その特徴から常人には難しい、一人でのコツコツとした反復する同一作業をこなし、他人の追随の及ばないような作品を作ることが出来ることにもなるようである。
今回の展示の中でも、一人の陶芸家は表面に無数の突起を気が遠くなる程、指で一つ一つくっつけた作品を作り、もう一人は同じ強さ、同じ太さで、一本一本あらゆる方向に無数の線を引いてそれが素晴らしい作品に仕上っている。また違った人は、極細の糸のように紙を無数に切り込んだ作品を作っているかと思えば、また別な人は、まるで大きな絵巻物の如き十メートル以上もする長い巻物に、無数の怪獣や色々の動物、それに色々な骸骨まで登場する絵巻物を描きあげていた。
これらの作品は、世界的に有名な画家三岸節子の作品とも共通する所も多く、その作品の成立過程に興味を引かれずにはおれない。最近は一般的にも、常識的な発想から出発したものとは違った作品が多いが、そういった抽象的な絵画の発想は、個々の画家の頭の中で生まれた発想を源として、その人の個人的な傾向から、時に奔放に、時に繊細に、時に辛抱強く、時に波に乗ってなどと、色々な特性に乗せられて発現して来るものであるが、そういった場合に、アスペルガー症候群のような反復作業に固執出来るような傾向がかえって役に立つのであろうか。
とにかく結果としての作品はどれも心を惹かれる素晴らしいものが多く、もしも将来「能力に応じて寄与し必要に応じて受け取る」ような理想社会が出来、人々が過酷な労働から解放されてゆとりある生活が出来るようになったとすれば、どんなに多くの素晴らしい作品が出来ることだろうとふと思ったのであった。
adhd,うつ、不安省な素併発しやすい
得意nなことに目を向ける特性gs強みになることもある、