老の特権

 2019年の暮れに脊椎管狭窄症で間欠性跛行となり、電信柱ごとぐらいに立ち止まらないと歩けなくなった。病院で調べてもらって、MRIでも異常は認められなかったので、そのまま様子を見ることにしたが、そのうちにコロナが流行り出し、感染が怖いので通院を止めて、自分でもっぱら歩く練習などをして様子を見ることにした。

 そんなことで、周りに迷惑をかけてはいけないし、もう九十歳を超えていたので、それを機会に仕事もすっかり止め、歩行器(シルバーカー)を買って、もっぱらそれを押して歩くようにした。コロナと足の両方で社会生活に区切りをつけたことになった。

 もうそれから2年が経ってしまった。歩行が遅くなり、疲れ易くはなったものの、幸い杖歩行で適当に休みを入れれば、何処へでも行けるようになったので、もっぱら杖を持って自宅の近くを散策するようにしている。

 仕事を辞めて自宅にいることが多くなると、自分の好きなように暮らせる。一生のうちでこんな有り難いことはない。好きな時に起きて、好きなことをして、好きな時に寝ればよいのである。初めはそんなことを喜んだものだったが、実際にはなかなかそうもいかない。

 別稿でも書いたように、老人の生活も結構忙しいのである。あっという間に一日が過ぎてしまう。ただ、スケジュールを自分の好きなように組めることが有難い。やだし、好きな時に起きるようにしておれば、自然と早くなって今では3時半に起きるのが普通になってしまった。それに合わせて寝る時間も7時半になった。幸い女房もそれに合わせてくれているので、あとは誰に気遣いすることもない。

 その代わり、朝が早いものだから9時頃になると、もう少し眠くなる。誰に遠慮することもないので、いつしかここで一眠り、ナップをとることになる。ちょうど現役の皆さんがあたふたと仕事に出かける一日で一番忙しい頃の時間帯である。初めのうちは何か後ろめたさを感じなくもなかったが、ここで一休みしないと、あと昼前まで眠気を引っ張ることになるので、いつしかもう決まったスケジュールになってしまった。

 ナップが済んだらまたパソコンの続きをしたり、本を読んだりしているうちにすぐ11時の昼になる。昼飯が済んだら、今日は何処へ行こうかと女房と相談して、その日によって適当に散策に出かけることになる。

 ふと考えるのだが、世間では皆がコロナの感染を恐れ、生活のために寝る時間まで削って頑張っている人も多いというのに、こんなに自分勝手な贅沢な?生活をしていても良いものだろうかと。しかし、今この老体に出来ることといえば、他人に迷惑をかけないように、適当に好きなように振る舞って、元気に過ごすことぐらいしかない。いつまで続くかは分からないが、行ける所まで行くより他ないであろう。

 これこそ老の特権として許して貰っている次第である。

 

 

 

 

 

 

朝のナップ

 

朝3時半に起きているためか、朝食を済ませ、体操をして、新聞を読んでいると眠たくなる

そこで一眠りすると元気になる

世間の人の出勤時間帯

”寝るほど楽が世にあろうか、起きて働く馬鹿もいる”