ウクライナ情勢の疑問

  このところ新聞の一面はウクライナ情勢で持ちきりの感じである。ロシアがウクライナ国境に十万もの軍隊を展開し、今にでもウクライナに侵攻し、戦争が始まるのではないかとも言われ、アメリカはじめ、ヨーロッパの国々、それにつられて日本までが、外交官を国外退去させ、緊迫の度合いが強まっている。

 ギリギリ双方の外交的取引がおこなわれているようだが、アメリカ側は「戦争だ戦争だ、ロシア軍は16日にも攻めてくる」「攻めてきたら極限までの経済制裁だ」と騒ぎ、新聞はそれを掻き立てている。

 ただ疑問なのは、ロシア側は平和的な解決を望んでおり、戦争はないと言い、ウクライナ政府も戦争はないと説明、ウクライナの国境から1キロ以内の村のルポルタージュでも、静かな平和な冬の景色で、住民たちも「アメリカのいうことよりロシアの方が正しいようだ。戦争はない」「戦争があっても、どこにも逃げようがない。心配だが、日常生活には変わりない」と落ち着いており、あまりにも落差が大きい。

 どうも日本の新聞やテレビの報道はアメリカ側の一方的な報道なので、どうなっているのか、いま一つ納得がいかない。日本までが戦争が迫っているので、外交官を引き揚げ、在留国民にも退去を求めているが、中国大使館は「我々は皆さんと共にいます」と声明まで出し、そのまま止まっているようである。アメリカが挑発しているのか、平和的解決と言いながら、自分は戦わないで、ロシアにウクライナへ攻め込ませたいのであろうか。

 アメリカが東西冷戦の終結後に、NATOは東に拡げないとロシアに約束したのを破って、旧ソ連圏であった東欧諸国を次から次へとNATOに参加させ、ついに旧ソ連の構成国であったウクライナまでNATOに組み入れようとしているので、ロシアがそれを何とか阻止しようとしているのがこの問題の本質のようである。

 ウクライナの東部の2州はロシア語を話すロシア人よりなり、数年前のウクライナ政変時から分離独立運動が起こり、ミンスク合意で、自治州のようにするという合意が出来て落ち着いていたが、その後ウクライナ政府が全く動こうとしないので、ロシア側から分離独立させようとする住民の動きなどがあるところに、ウクライナNATOに加入させようという西側の動きが重なって、緊張が高まったもののようである。

 ウクライナNATOに加入すれば、ウクライナで衝突が起これば、自動的にNATOが助けなければならないことになり、ロシアは同じロシア人を敵に回して戦わねばならないことになる。東欧諸国はまだしも、ウクライナは元々ソ連の一国であった上、昔からロシアとの関係も深く、第二次世界大戦ではスターリングラードでの大会戦などで象徴されるように、ロシアにとっては中心的な利害の絡む土地なのである。

 ナポレオンがモスクワに迫った時も、ここを経由したのであり、ロシアにしてみればモスクワのすぐ近くまでNATOが迫って来ることになり、それを避けるべく、ウクライナNATO加入を止めるように西側に求めているが、アメリカが頑として、それはウクライナが決めることとして話に応じないところで対立しているようである。

 日本の新聞報道などは西側からの情報しか言わないので、一方的にロシアが攻めてくるぞと煽るばかりで、どうしてなのか、分かりづらいが、アメリカはロシヤに戦争をさせて、ロシアを悪者にに仕立てて孤立させようと挑発しているようである。