合理化されたビジネスホテル

  先に書いたように、我が家の甲冑などの展示を見に犬山へ行って来た。以前だったら、日帰りで行くところだが、九十歳を超えては無理は禁物と考えて、犬山で一泊することにした。

 以前ならお城の近くの名鉄ホテルに泊まるところだが、丁度建て替え中とかでやっていない。仕方がないので何処に泊まろうかと思案したが、同じ名鉄観光の経営だとかいうビジネスホテルが、駅前にこの夏にオープンしたばかりなのを見付けて、そこに泊まることにした。

 名前からしてミューホテル犬山エクスペリエンスとか称して、新しいチェーンでの展開を考えているらしいビジネスはテルだったが、新しいだけに、建物の構造も運営もビジネス客用に徹底的に合理化して造られたと思われて興味深かった。

 観光やレジャーなどの用途でなく、ビジネス客だけを相手にするとすれば、それに徹すればそれなりの徹底した合理化が考えられるであろう。これまでにも、あちこちのビジネスホテルに泊まったこともあるが、多くは、普通のホテルを狭く安く凝縮したようなもので、それぞれに合理化の仕方に哲学があって面白かったが、次第に合理化も頂点に達して行くような気がする。

 このミューホテルは駅の真前の、これ以上には望めない立地条件に恵まれている。建物の構造も、これ以上は考えられないような合理的で単純な構造となっている。校舎のような横長の廊下一本で賄える構造で、一階は端にエントランスやレセプションルームがあり、一階はあとは殆どが管理部門や必須な設備などと、大浴場で占められ、2階から5階までが殆ど同じような構造の客室になっているらしく、外から見ると学校か会社の寮かのような感じである。

 そこに食堂棟が斜めにくっついており、食堂へはホテル内からそのまま行けるし、反対側からは、外部の客も受け入れられるようになっている。

 玄関から入ると、広いレセプションの空間になっており、受付や待合、売店などがあるが、受付は狭く若い女性が一人いるだけである。ただその前にかなり大きな機械が据え付けられており、宿泊の手続きなどは全てそれで済ますようのなっている。予約をして前払いを済ませておれば、必要事項を入力するだけで、部屋のカードから食事券、領収書まで全て出てくるようになっている。

 便利と言えば便利だが、ホテルについて受付の人に対面することもなく、機械の操作だけでは、慣れない者にとってはちょっと落ち着かないが、これからはこういうのが普通になっていくのではないだろうか。

 そのカードを持って、廊下を通り、エレベータ室の前のガラス戸でカードをかざせば扉が開き、中のエレベータに乗って部屋に向かい、カードをかざして部屋に入ることになる。

 部屋の中がまた合理的に出来ている。入ったすぐ横がトイレとバスなのはよくある通りだが、多くのビジネスホテルのように、窮屈なトイレ付きバスと違って、両者を分離し、バスはシャワーのみとして、トイレを少しばかりゆったりとさせている。

 シャワールームはその代わり、天井からの大きなシャワーと手持ちのシャワーを備え、少し豪華にしている。大浴場を備えたビジネスホテルなどでは、部屋の浴槽の利用率が少ないので、トイレとシャワーを分けたのは良かったと思う。

 トイレを出て反対側を向けば鏡と洗面台があり、それに続いてカウンターがあり、そのの下がタオル、夜着などの物入れ、上の方にはコーヒカップなど収納場所もある。コーヒを沸かしたり飲んだりすることも出来る。

 カウンターの奥がベッドになっているのも普通のパターンであるが、その奥の窓側のスペースは狭いが、壁にくっついた作り付けの椅子と、小机と自由な椅子が一脚あるが、固定した椅子の下が金庫とは驚かされた。

 ベッドの足元の壁面には、今時の大型のテレビが置かれ、勿論WiFiも使える。あとは、部屋の装飾は額も、花ひとつもないが、壁面が狭くて、大きなテレビが置かれているので寂しい感じはしない。

 仕事で来て、一泊するだけなら、まあまあ許せる範囲内ではなかろうか。中途半端な古いホテルより、新しいだけでも気持ち良く過ごすことが出来た。恐らく、運営も合理的に考えられており、スタッフも殆ど見かけなかったので、恐らく犬山ホテルに勤めていたという中年の男性の他は、殆ど非常勤職員で賄っているのではなかろうかと思われた。

 一般のシティホテルや観光地などのホテルでは、対面のサービスも大事であろうが、ビジネスホテルに徹すれば、今後はこのような益々合理化の進んだホテルが増えるのではなかろうか。