皆逝ってしまった

 昨夜はひょっこり昔の友人の夢を見た。開業医をしていたが、何故かその君の家にお邪魔していた。奥さんも一緒だった。最早、夢の記憶はすっかり薄らいでしまったが、何でも、子供が後を継いでくれたらと言うような話になったところ、奥さんが子供がいて医者になったのだが、比較的最近、ポックリ急死してしまい、突然の後継者の喪失で落ち込んでいると言うことになり、悪いことを言ったなと思って目が覚めたのであった。

 実際にはその友人には子供がいなかったのだが、その友人も、もう何年か前に死んでしまっている。息子が後を継いでくれる積もりだったのが、当てが外れた開業医の友人は他におり、夢ではそれがゴッチャになって結びついて出てきたのであろう。

 息子に死なれてがっかりした友人は、別に二人もおり、一人は個人病院を経営していたが、息子に先立たれて病院を閉じてしまった。もう一人は歳を取って息子に譲ってやれやれとしたのに、一〜二年も経たぬ間にその息子に死なれ、仕方がないので自分がまた診療していたようだが、二年か三年後には本人も死んでしまった。

 そう言えば、八十代の頃にはそういう友達も何人かいて、年に一度は必ず集まる会などもあったが、もうその連中も皆逝ってしまった。一時は私が世話をして、毎年、池田の料理屋で集まっていた時期もあった。ところが、その料理屋の主人が亡くなり店を閉じてしまったので、箕面に別の場所を探してそちらへ移ったが、今度は仲間の方が順に皆死んでいってしまい、消滅してしまった。

 昔それとは別にも、馬があったのか、よく一緒に酒を飲み、色々議論しあった友人もいたが、その男もなくなり、一緒に絵を描いていた友もいなくなった。写真クラブで毎年グループ展を開いていた友人たちも皆逝ってしまい、クラブも無くなってしまった。残った友人もこの数年で皆亡くなり、一人だけ残っていた友人も認知症で施設に入り、音信不明になったしまった。

 私の兄弟も、5人もいたのに、一人欠け、二人欠けして、今やボケて施設にいる姉と私だけになってしまった。以前は時々車椅子に乗せて、近くの散歩に連れ出したりしていたが、コロナのために面会にも行けないので、甥から情報を聞くだけである。

 男の平均寿命が82〜3歳、女の方が長くても90歳とは行かない。私は年が変われば、来年はもう95歳になるのだから、長い間生きて来たものである。こちらがいつまで生きるかは天に任せるよりないが、90代はこういう喪失を過ぎた孤独の時代だということをしみじみ感じさせられている。

 死亡欄また友ひとり消え去りぬ

 死亡欄最後はおのれ無の世界