戦中・戦後の短歌

 昔の雑文とともに、戦中・戦後の自作の短歌集が出て来たので、そこから適当にピックアップして記載しておきたい。まだ中学一年生の時の開戦から、敗戦後一年ばかりの間のものである。

 一冊のノートにまとめられており、表紙には桜を描いて、四季・忠誠詩歌集と書いてあり、後から改四季短歌集「やまざくら」と訂正されている。今とは全く違った戦中、戦後の頃の、当時の若者の心情が想像出来て興味深い。

 

 1941年12月8日の開戦の時には、

国民のかたち正せり大詔師走八日に米英撃てと

神国の意気示さんと九軍神ハワイにあげし大功(おおいさお)かな

撃て米英誓う心に正義あり感激あふる師走の八日

大君の御楯となりて行く鷲に南の風よ心して吹け

冬の日に米艦隊を撃滅すハワイの奇襲大勝利かな

 

 42年から45年の間(戦時中)

米英を今こそ撃てと日本立つ堪忍袋今や尾を断つ

深山の朽木の我も大君に盡す心は他人に劣らじ

大君の醜の御楯ぞ我が体君のためにぞ笑いて散らん

南海の孤島を守る将兵(つわもの)は決然たてり敵を迎えて

驕敵を本土の前で迎え撃つ将兵(つわもの)の意気天をつくなり

 

 海軍兵学校

君のため神去りませし軍神と同じ心で我も登りぬ(江田島の古鷹山)

春風に吹かれてそよぐ松の木の木陰に休む時こそ楽し

如何ならん試練の嵐吹かんとも乗り越え行かん大和男の子は

戦友の屍を越えし我もまた友に越えらる屍とならん  

照につけ曇るにつけて思うかな我がたらちねの安らかなれと

 

 戦後

諸人よたとえ剣は捨つるとも留めおかまし大和魂

えびすども我が神国を犯すとも我は忘れじ大和魂

神国にあだなすあだをうちこらし守らで止まじ我が故郷を

我が国は民の本なる国ならず永久に栄えん君が御国ぞ

神国に憎き夷狄の旗翻り何故に淋しき今日の空かな

爆風に敗れし窓に風吹きて寒さに震ふ我が母校かな

皆人の憎き言葉に乗せられて違える道に行くぞ悲しき

今日もまた思わぬ時の停電にカンテラ灯し本を読むかな

停電に赤き火鉢の火が光る