風邪を引かなくなった

 現役で外来診療をしている頃には、毎年冬になると、12月頃と、2月の末頃か、一冬に2回ぐらいは必ずと言っても良いほど、風邪を引いたものであった。 風邪で寝込むようなことは滅多になかったが、喉が痛かったり、鼻水が出たり、くしゃみや咳が止まらなかったりで、2〜3日は難儀したように思う。

 それが歳をとって、患者を直接見ることがなくなるとともに、冬にもあまり風邪を引かなくなった。それでも冬には、時には鼻水が出たり、咳が出たりすることがなくなったわけではなく、やはり冬になると時には風邪を引くこともあった。

 ところが、コロナが流行り出して、早、二冬が過ぎたが、振り返ってみると、不思議なぐらいに、その間一度も風邪を引いていないではないか。いつまでもポケット・ティッシューが減らないで、そのまま残っている。

 もう仕事をしていないし、家にいることが多く、外出する時には、コロナの感染予防のために必ずマスクをしているし、帰った時には、玄関でマスクを外し、外出着を脱いでハンガーに掛け、洗面所に直行して、手を洗うようにしている。手洗いも以前より丁寧にしている。

 歳を取ると風邪もひきやすいと言われるし、やはりコロナにはかかりたくない。まだ薬もないし、ワクチンも遅れている。そうすれば予防よりない。人並みの注意はしておいた方がよいだろうと、マスクや手洗い、人との接触を減らし、不要な外出を避けるなどといった、普通の衛生的注意は守るようにしてきたが、それによってコロナばかりか、普通の風邪まで、こんなに抑えられるものかと身をもって知らされた気がする。

 外来をしている頃は、相手が病人だから細菌やビールスなどの感染性の病原体を持った人に嫌でも接触することが多いので、いくら注意していても、感染をゼロにすることは出来なかったのであろうが、生活環境が変われば、歳をとって若い時より免疫力も衰え、抵抗力が落ちていても、感染はこんなに変わるものだということを実感させられている。

 コロナのおかげで、風邪もひかないで元気にしておれることを感謝すべきであろうか。