故意か過ちか・・高橋洋一官房参与

 菅首相内閣官房参与をしている高橋洋一氏が、5月9日午前に、このコロナ禍の中でのオリンピック開催について、Twitterで「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と発信したのが問題になっている。

 ネットでは「亡くなられている方もいる中、「さざ波、笑笑」とは神経を疑う。危機感がない、などと批判が巻き起こった。高橋氏は投稿に、日本を含む8カ国の100万人当たりの新規感染者数を追うグラフを添付しているのだが、それによるとインドやフランス、米国など、起伏の激しい国に比べて、日本の動きがずっと少なく、グラフ下方を這っているので、これから言えば、さざ波に見えないでもない。しかし、それを言う通りに認めるとしても、「笑笑」はあまりにも不謹慎ではなかろうか。

 第4波に襲われ、大阪では医療崩壊が現実のものとなり、東京ばかりでなく、名古屋や福岡でも感染が急増して緊急事態に加えられ、コロナの流行が大変な時期になっており、病院に入れず、自宅などで亡くなられる人も何十人と出ている時に、「さざ波、笑笑」では、あまりにも酷すぎる。

 それも、内閣官房参与という立場である。国会で、これに対する見解を聞かれた菅首相は「個人の主張については答弁を控える」と言ったが、政府の一員であるのに「不適切だった」とも言わなかったのは、菅氏の首相不適格をも示すものでもあろう。

 高橋洋一氏はこれらの反論にも猛烈に反発し、同じ統計図を掲げて「調べてから言え」などと発言している。しかし、このグラフにはコロナ対策に成功したアジアの国を載せていないのは兎も角として、この発生数の比較だけで、現実を見ようとしない態度は、実情を見ようとせず、机上に纏められた成績だけで、物事を判断しようとする学者の欠陥をまざまざと表しているようなものである。

 こんな人物が首相に何を指南しているのか、大変気になるところである。そら恐ろしい気さえする。高橋氏は、他にも「ワクチンの遅れや五輪危機はマスコミが騒いでいるだけだ」とも言っているようである。また以前の五輪絡みの著書に「儲かる五輪、訪れる巨大ビジネスチャンス」という本では、宣伝文句に「規制緩和は必ず起きる」「御社は何で儲ける」「2020年という『稼ぎどき』を逃すな!」(2016.9.10.角川新書)というのもある。

 実際に著書を読んだり話を聞いたりしたことはないので、詳しいことはわからないが、よくある亜流のいい加減な学者のように思えてならない。本人の示したあのグラフから本当に「笑笑」と思っているのか、何らかの意図があって、ああいうTwitterを流したのか。故意か過失かわからないが、もう少しコロナ禍やその悲惨な結果、国民の苦しみを知って、菅首相に話して欲しいものである。