ガースーとメルケル

 コロナの第三波が拡がって、毎日のように感染者数も死者数も増えている時に、菅首相が「ニコニコテレビ」に出たというので、何を言ったのかと思ったら、先ずは自ら「ガースーです」と言って皆を笑わせ、「GoToが悪者になってきましたね」などと言い、今の所、「GoToを中止する積りはない」と言っていたそうである。

 丁度同じ頃、ドイツでは、メルケル首相が国民に呼びかけて、「コロナで590人とやらの死者が出ている。私はそれには耐えられない。どうか国民はこの年末年始は出歩かないで、家にとどまっていて欲しい」と言うようなことを、怒りを込めたような口調で、体を震わせんばかりに、話している映像が動画で流れたいた。ドイツ語がわからなくても、こちらまで涙ぐむぐらいの熱演であった。

 同じコロナの脅威にさらされている両国の首相が国民に話しかけるのに、こんなに差があるのかとびっくりさせられたのは私一人ではあるまい。文化に違いがあるので、それぞれの首相の国民への話しかけ方も違うのは当然であろうし、メルケル首相が議会のような所で喋っているのと、菅首相が民間のテレビで喋っている条件も異なるが、そうしたことを考慮に入れても、そのあまりにもの違いに驚かされる。

 自分も含めて日本人が可哀想になる。コロナがどんどん広がって、医者を含めたアドバイザーたちがGoToの一時停止を求めている時に、国民に直接何も語りかけようとせず、記者会見にさえペーパーの棒読みでしか答えず、民間のテレビに出て、ふざけてまねをしても、肝心なことを何も話さず、GoToは止めないというのでは首相失格である。

 国民の死より経済が大事だと考えているのであろうか。あるいは旅行業者団体の長である、二階幹事長に気を使っているのであろうか。皆が一致していっているのは、今押さえ込まないとコロナは手に負えなくなるということである。コロナがこれ以上ひどくなれば経済も持たなくなるであろう。

 この時期にGoToを続けるのはもはや犯罪的とも言える。まさかと思うが、勘ぐれば、コロナで死ぬのは主として老人であり、若者は罹患しても治る率が高い。コロナで老人人口が減れば、年金も医療費も節約出来るので、わざとコロナには目を瞑って、経済優先で行こうとしているのではとさえ思いたくもなる。

 せめて、首相は経済優先で行くなら行くで、国民に直接話しかけるべきである。官僚の書いたペーパーを読むので開く、自分の言葉で国民に説明すべきである。それが首相の仕事の筈である。指導者が直接話しかけて、号令をかけねば部下は動かない。官僚が理解してやってくれているから、自分は黙っていても良いと思っているなら間違いである。首相が先頭に立たなければ、危機は乗り越えられない。

 学術会議任命拒否問題についても適切に答えられないし、コロナ対策も的外れである。しかも、自分の言葉で国民に働きかけられなければ、首相失格である。辞めて貰うしか道はないのではなかろうか。国民はもっと声を大にして、菅首相の退陣を求めるべきであろう。