中山荘園古墳

 地域のコミュニティ雑誌か何かに、中山荘園古墳の紹介記事が載っていた。長年府県は違うが、比較的近くの池田に住んでいるのに聞いたことさえなかったので、興味をそそられた。 阪急電車の売布から8分と書いてあったので、それなら売布駅のすぐ横のビルにある映画館に時々映画を観に行くので、その序でにでも、確かめに行こうと思った。

 機会が訪れたので、ある日、Googleの地図を見て見当をつけて行ってみた。ところが、すぐに分かる積りで現地へ行ったものの、辺りはすっかり住宅地で、道が入り込んでいるのか、容易には分からない。山が近いので、山裾に見当をつけて、近くの道や路地を行ったり来たりしたが辿り着けない。出くわした人に尋ねてみても、「私はここに30年住んでいるが知らない。あそこら辺ではないか」と親切に教えてくれたが、言われたあたりへ行っても、道は行き止まりが多くて分からない。仕方がないので、出直すことにしてその日は諦めて帰らざるを得なかった。

 しかし、分からなければ、余計に行きたくなるものである。Googleの地図で調べなおしてみると、如何にも簡単に行ける筈なのである。どうも、その正しい道だけへは行かずに、近くの違った道ばかりを探していたようであった。

 そこで、次の機会を待って、今度は地図で覚えた道を間違えずに行くと、簡単に辿り着けた。山の斜面にへばりつくように、大きなマンションがデンと構え、そのマンションの横に小さな公園があり、そこから山へ登る階段が見える。入り口に「古墳に見学に来られた方はマンションの住民の迷惑にならないように」との注意書きが書かれていた。公園の一番奥にある階段を上って行くと、瘤状の小山があり、その正面の柵の向こうに古墳の穴があいているのが見えた。そこから中が少しだけ覗けるようになっていた。

 その正面から古墳に沿ってまた階段を上がり、古墳の上の裏側にあたる所まで行けるようになっており、そこに案内板があった。どうもこの古墳はすぐ横のマンションを作る時に偶然発見されたもののようで、そのため、あまり知られていなかったのではなかろうか。規模の小さい山の斜面に作られた古墳であり、8角形をした構造が特徴的で、この地方のかっての豪族の墓で、紀元3世紀から7世紀の間に作られたものと推定されているそうである。

 古墳というから、もっと規模の大きなものを想像していたが、山の斜面を利用して作られた小規模のもので、恐らく古代には、似たようなものが、あちこちに多く作られたのではなかろうかと想像される。それらが千年以上も過ぎる時代が経つうちに、色々な紆余曲折を経た歴史の中で、忘れられて潰されたり、捨て去られたりして、多くが消失していった中で、たまたま残されていたものが、マンション建設の工事によって見つかったものではなかろうか。

 この土地のすぐ東には有名な中山観音があり境内には中山古墳として、古墳の入り口から奥の大きな石組みや石棺を見ることが出来るが、その近くなので、昔はここらの広い土地が中山寺の荘園であったのであろうから、それに関連してか、或いは、それよりももっと古い時代に、ここらに住み着いていた人々の豪族が葬られた墓だったのかも知れない。

 記録にも残っていない古い時代の人々の生活の名残であり、折角見つかったものだから、大切に保存して行きたいものである。