能勢電の窓のブラインド

 電車の側面の窓(側窓=がわまど)には大抵ブラインドがついている。日除けとかカーテンと言ったりもするものである。電車の走る方向によって左右どちらかの窓から陽が差し込んで、暑かったり、眩しかったりするので、それを和らげるためにあるものである。

 今は大抵布性であるが、昔は鎧戸であったことを覚えておられる方もおられるであろう。また、東京の山手線などでは、96%紫外線をカットする窓ガラスを使っているので不要ということで、ブラインドは2002年から廃止されたそうである。やがて、この電車の窓のブラインドは消えていく運命にあるのかも知れない。

 しかし、私が利用する阪急電車には新しい車両にも、まだ皆ブラインドがついているようである。やはり陽が差し込む時など、紫外線の問題だけでなく、眩しかったりするのを防ぐ日除けの効果があるので、始終利用している。

 このブラインドのことで、この間、川西能勢口から妙見山方面に行っている能勢電車に乗った時に、この電車の側窓のブラインドがユニークなことに気がついた。時間外れで空いていたので眺めてみると、片側の窓がいくつも続いてブラインドが降りていたが、どの窓のブラインドにも、下の方に同じ田園風景の写真が印刷されているのである。いつから始まったのか知らないが、無地のブラインドと違って心を落ち着かせてくれるような気がした。

 能勢電車の沿線は、昔は初発の川西あたりは拓けていても、あとは殆ど山間の農村地帯を走っている電車だったのだが、近年は宅地開発などですっかり様変わりしてしまっている。川西能勢口の周辺はデパートやスーパー、銀行なども並ぶ大都会の風景だし、沿線にも住宅地が続き、今では、昔の面影は消え失せ、車窓の景色もすっかり変化してしまった。

 昔は、駅名からしても、絹延橋、滝山、鶯が森、鼓が滝と風流な名前が続いて、それからだけでもわかるように、風情に富んだ沿線であったのだが、今や山が近いので緑の区間も残ってはいるが、団地や、細々とした家屋、商店や工場などがごちゃごちゃ立ち並んでいるような所が多くなってしまっている。

 そんな所で、この電車のブラインドが効果を発揮している。この電車は今でも部分的には山合いも走っているので、直接窓から見る外の風景が雑多に混乱した所を走るようになっても、外の景色はブラインドが字のごとくに全てを消してくれるのである。

 かすかに影は残るものの、雑多な市街地を走っていても、車内で見るブラインドの世界は、どこまで行っても、静かな気持ちの良い田園風景なので、つい山合いの景色の続きのように見えて、いつまでも田舎の風景を見ながら走っているようなゆったりした気分にさせてくれるのである。

 これまでこんな電車のブラインドを見たことがなかったが、他の電車でも、それぞれに考えてみたら良いのではなかろうか。きっと乗客の心理面に良い影響が出てくるのではなかろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

田園地帯の風景が下方に印刷されている。

 

外にいっぱい新興住宅がごちゃごちゃと立ち並んでいても田園地帯を走っている感じ

気持ちが良い、

能勢電では山下から妙見山の間里山を眺める田舎の風景やましたから日生中央の間も山沿いの田舎山下から川西能勢口までは新興住宅地帯。

田舎から都会に入っても田舎を走っている感じ、錯覚にとらわれ楽しい