コロナが流行し出してから、この国ではでどこへ行ってもマスク姿ばかりと言っても良い。マスクはコロナの予防に確かに効果があるようで、初めのうち、否定的であった国々でもそのことに気づいて、何処の国でもマスクが推奨されている。
ただ、日本ではむしろ必要以上にマスクが流行っているのではなかろうか。最近でこそマスクをしていない人にも出会うが、ひと頃は何処へ行っても、一人残らずマスクをしている感じで、慣れないせいもあってか、何か恐ろしささえ感じたものである。
人通りの少ない住宅地でも、郊外の川の堤防の上の道のような風のよく通る開けた所でも、皆マスクをして歩いている。折角、清々しい空気を胸一杯に吸えるような所なのに、行き交う人は一人残らずマスクをしている。どうも、皆がしているからしておかねばと、単に同調してマスクをしている人も多いのであろうか。
それは兎も角、日本人はマスクが好きなのか、外国ではマスク姿など殆ど見られなかったのに、日本では花粉症のためか、随分以前から、冬から春にかけてはマスクをつけている人が多かった。女性では、それに便乗して、スッピンを隠すためにマスクをしているという人もいたらしい。
マスクも初めのうちは白い不織布の使い捨てのようなものが殆どであったが、これだけ広がると、色や模様のついたもの、顔にフィットしやすいような形をしたもの、ひんやりした感じのもの、自家製のものなど、多様になった来た。マスク専門店まで出来ているのには驚いた。
安いものは10円ぐらいから、高いものは何万円するのまであるとか。
そう言いえば、私が子供の時にもマスクをしていたことを思い出した。昭和9年にインフルエンザが流行ってマスクがよく売れたというっ記事があったので、その頃のことだろうと思うが、今のマスクと違い、黒い三角形のような形をしたマスクであった。
私の記憶では、立体的な作りで、芯に茶こしのような細かい金網が入っており、その表裏に布を張ったようなもので、表面は黒い別珍かビロードのような生地で覆われ、表面に四つか六つの小さな穴が開けられていたと思う。表面から見た感じは、この文の先頭に掲げた写真に見られるようなものであった。
マスクそのものは明治の初めから日本に入って来ていたらしいが、1918年から20年にかけてのスペイン風邪の世界的な流行で一気に広がったようである。上の写真はその頃のものであろう。その頃からの影響で、私たちもインフルエンザの予防ということで、黒いマスクをさせられていたものだったのであろう。
それ以来、マスクは色々改良されてきて、現在のようなものになったらしいが、最近知人に教えられて、これをするとマスクが顔に密着しないで、呼吸や話をするときに楽だと言って買ったのが、顔とマスクの間に挿入して用いるプラスチックで出来た型枠のようなものである。 実際使ってみると、特に吸気の時などに、マスクが鼻などに密着せず気持ちが良いの
で、最近はずっと愛用している。
これは要するに昔、我々が子供の頃に用いたマスクの金網と同じような物なのである。ひょっとしたら、この型枠のようなものを考案した人も、昔のことを知っていて作ったのかも知れない。いつまでコロナが続くのかは定かではないが、少なくとも今年の冬から来年の春ぐらいにかけては、まだお世話にならなければならないマスクであるから、出来るだけ快適なマスク環境を整えておきたいものである。