自民党は人種差別主義政党なのか

 日本国籍のテニスの大坂なおみ選手がアメリカの大会で2回目の優勝を果たした。日本の新聞も大きく報じ、多くの人がその偉業を賞賛した。試合の時に大坂選手がアメリカのBlack Lives Matterに賛同して、殺された七人のアフリカ系アメリカ人の名前を帽子につけて臨んだことについても、賞賛してその七人についての紹介までした新聞もあった。

 安倍前首相も、9月13日に「二度目の全米オープン優勝、おめでとうございます。最後まで諦めることなく、フルセットでの逆転勝利。感動をありがとう!ますますのご活躍を祈念しております」とSNS に投稿している。

 他にもSNSでも賞賛の声も多かったが、日本では、よく言われるように、「スポーツに政治を持ち込むな」といった批判も結構あったようで、安倍首相も大坂選手の反差別アクションについては完全に無視していた。スポーツ選手であろうと、どんな職業の人であろうと、政治的な発言をするのは当然の権利で、何も言わない方がおかしいのではなかろうか。その人の政治的発言がどうであろうと、試合に勝ったことを素直に喜べば良いのではなかろうか。

 SNSからの報道によると、自民党松川るい参院議員も、大坂選手の全米優勝のニュースをリツイートし、下記のような投稿をしていた。

大坂なおみさん、優勝おめでとうございます!!優勝だけでもすごいのに、7枚のマスクに込めたメッセージは凄いインパクトを米国に世界に与えました。日本人として誇りに思います。米国警察は黒人の命を軽視するのをやめてほしい。〉(9月14日10時55分)

 ところが、この松川議員、それから2日後、この投稿を削除し、謝罪してしまっているのである。黒人差別のツイートを削除・謝罪するならわかるが、黒人差別への抗議を撤回・謝罪するとはどういうことなのだろうか。自民党支持者からの非難や攻撃があったからのようである。

〈お前はアホか!! 自民党参議院である自覚はないのか。議員にしてはあるまじき情弱の極み。BLMの現状をしっかり把握してツイートして下さい。野党議員と同レベル。絶対に許せません!!〉(絵文字を省略した以外は原文ママ
〈松川さんのあまりの稚拙なツイートを見て驚きました。これが日本の参議院議員のレベル!? アメリカの差別の問題と、今回のBLMのきっかけは別物。殺された黒人は、犯罪を繰り返していた前科持ちの凶悪犯で、白人の警察官も身の危険を感じながらの攻防である。無実で無垢な黒人が殺された訳ではない。〉
〈黒人犯罪者は米国警察官、そして遵法市民(他の黒人を含めて)の命を軽視するのをやめてほしい。国会議員の立場で前科何犯もあり、逮捕時に抵抗して警官に危険を及ぼすような挑発的な行為する犯罪者を擁護するのをもやめてほしい。〉(原文ママ
〈終わったね、松川るいさん、小賢しいこと。大坂なおみは日本中から見放されてるよ。貴女は自民出て立憲に行けばいいよ〉などなど。
 こんな差別的な投稿が殺到していたのだ。差別に反対したことを、「国会議員にあるまじき」とか「自民党を出て行け」とか「終わった」とか……。自民党の支持者ってどこまで低俗なのかと思わざるを得ない。さらに百田尚樹も〈最後の一行、国会議員がこんなこと言っていいの?自民党は注意しないのか?〉と言っているそうである。

 BLM運動拡大のきっかけとなったジョージ・フロイドさん殺害に限らず、アメリカで警察による黒人の殺害が長く問題となってきたことは紛れもない事実であり、そもそも「黒人の命を軽視するのをやめて」というのは政治的立場を超えて人権問題であり、人類共通の課題である。それについて素直に自分の受け止めた感じを書いただけなのに、なぜ「こんなこと言っていいの?」などと咎めなければならないのか。咎める方も差別される側にいることを知らないのであろうか?

 松川議員も情けない。〈下記Twitterについて。殆どの警官の皆様は命懸けで市民を守っています。それにもかかわらず、軽率なコメントをしてしまったことを関係者の方々に心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。〉と書いて元のツイートを削除してしまったのである。

 アメリカの人種差別問題を少しは勉強すべきであろう。未だに日本人の中には、アメリカ社会を白人主流の社会と思い、人種問題については自分たちの関心外のこととし、自分たちがが白人側にいると思って、黒人の運動は異分子の騒動ぐらいにしか考えない人がいる。

 しかし、少し調べればすぐにわかることであるが、アメリカの人種問題は、世界の流れから遅れた、歴史的、構造的なもので、世界の何処の人々にとっても重要な人権問題なのである。自民党関係者やその支持者たちも、いつまでも無知な者のアメリカ礼賛を止め、冷静に客観的な世界の動きを見ないと、世界の変化から取り残されてしまうであろうことを知るべきである。