先に書いたが、私は昨年の10月の末から、”脊椎管狭窄症”になり、間歇的跛行といって、休み休みでなくては歩けなくなり、もっぱらシルバーカーなる歩行器に頼って歩いていたが、最近、思いもかけずに回復し、また以前のように歩けるようになった。
90歳を超えてから起こったものなので、最早、以前のように普通に歩けるようにはなるまいと覚悟していたが、約8ヶ月はかかったとはいえ、以前と同じように歩けるようになったのはラッキーととしか言いようがない。
典型的な間欠的跛行の症状から、いわゆる”脊椎管狭窄症”には間違いないのであろうが、骨の変化によって神経が圧迫されて起こったものなら、骨に変化でも起こらねば治るわけはないであろう。それが回復したというのは、骨に変化がなくても、脊椎管を出た近くで、神経が周囲の靭帯なり、筋肉なりの軟部組織の圧迫などによって、同じような症状が出ていたためと考えるべきであろうか。”脊椎管狭窄症”と言われているものには、こういった症例も多いのではなかろうか。軟部組織の問題が主であれば治ったとしても不思議ではない。
私の場合はMRIやX-rayによる検査では異常は見られなかった。立位でのMRIなり、もっと詳しい検査でもすれば、あるいは病変を指摘出来たのかも知れないが、検査した範囲では、骨も年よりずっと若々しく、脊椎骨の老人性変化も殆どなかったし、MRIでも黄靭帯の肥厚なども見られなかった。
こういう所見から見ると、いわゆる”脊椎管狭窄症”と言われるものには、本当に脊椎管の骨やそれを囲む靭帯など変化によって、脊髄から分岐して脊椎管から出て行く神経が圧迫されて起こる”真の”脊椎管狭窄症の他に、それと関連の深い、靭帯や筋肉、その他の軟部組織による神経の圧迫などによって起こされる”脊椎管狭窄症”も多いのではなかろうか。軟部組織の関与が大きいものであれば症状の変化も理解しやすい。
そういえば、巷に”脊椎管狭窄症”の人の症状は、長い間に波が大きいと言われているし、人によって違うが、何かしているうちに良くなったという例も聞く。また、SNS を開くと、いわゆる理学療法士関係の人たちの、”脊椎管狭窄症”の治療についての広告や治療経験が沢山目に付く。中には、はっきりと整形外科医に行くべきものと、自分たちの治療の対象になるものを分けて説明している例も見られる。
私の場合も、ひどい時には道を歩くにも、電信柱ごとに立ち止まって、休憩を入れなければ歩けず、夜に寝る時も仰臥位が取れず、得意だった右側臥位もダメで、無理やり我慢して、左側臥位でしか眠れなかった時期もあり、歳から考えて、もう二度と杖もなしに歩けることなど考えられなかったのが、時間は掛かったにせよ、症状がすっかり取れて、昔と同じように杖もなしに普通に歩けるようなったのは、無神論者も神に感謝すべきであろうか。
世に”脊椎管狭窄症”と言われて困っている人は多い。その中には本当に脊椎管の骨の変化や、それを取り巻く黄靭帯などの変化で、神経が圧迫されて起こっている、”真の”脊椎管狭窄症もあり、そのような人は整形外科医と相談して、手術を含めた最適の治療を受けるべきであり、そうしなければ良くならないものも多いが、反面、私のように軟部組織による圧迫が主で、治りうる”脊椎管狭窄症”のあることも知っておくと良いであろう。
”脊椎管狭窄症”と言われ、間歇的跛行に悩まされている人も決して悲観することはない。整形外科的な治療法も進んでいるので、よく相談して適切な治療を受けなければならない場合もあるが、そんな治療を受けなくても、私の場合のように、諦めずに運動や歩行を続けている間に、すっかり良くなることもあることを知って、希望を持って判断していただければありがたいと思っている。