アメリカの刑務所産業

  アメリカの人口は世界の5%であるが、アメリカの刑務所に収容されている人の数は世界中の全収監者の25%になるそうである。アメリカの収監者数は1970年ごろから増え、現在は230万人に及び、もちろん世界一である。

 中でもアフリカ系の人口が全人口の6.5%であるにも関わらず、収監者の中でのアフリカ系が40.2%を占めていることは注目すべきことである。白人では17人に一人が一生に一度刑務所に入る割合になるのに対して、アフリカ系では3人に一人という割合になるそうでもある。

 これらは全て昨日見たNetflixからの受け売りであるが、最近問題となっている白人警官によるGeorge Floyd氏の虐殺事件によって引き起こされた、Black Lives Matterの運動を見て、アメリカにおける人種問題についての関心が呼び起こされて見たものである。これは4〜5年前に作られたものらしいが、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の歴史を知るには必見の映像であろう。アメリカにおける人種差別の問題は歴史的なもので、未だに根が深く、構造的なものになっていることにいささか驚かされる。

 アブラハム・リンカーン奴隷解放の歴史は有名だが、解放された奴隷の労働力を失った南部の農園主たちは、その時に出来た修正憲法13条の例外規定である犯罪を犯したものは例外とされるところに目をつけて、アフリカ系の人たちを犯罪者に仕立てて奴隷労働を続けさせたようである。

 それ以後もずっと人種隔離制度を続け、クークラックス団その他による残虐なリンチなどが繰り返され、アフリカ系の人たちの人権を認めず、黒人は劣等で、恐ろしい人間だという印象を植え付け、経済的にも最下層に追いやってきた歴史が続いて来た。

 1960年代になってキング牧師などを先頭に公民権運動が盛んになり、モンゴメリー・バス・ボイコットやリトルロック高校事件などで幾多の問題を起こしながら、1963年のワシントン大行進を経て、人種隔離政策が破綻するが、それでも、その後も白人優位主義は強く、麻薬の問題などをテコにアフリカ系の人々に対する抑圧は長く続いてきている。

 そして1980年代になると、今度は刑務所の民営化が進み、大量の受刑者を収容し、劣悪な条件の下で労働させ、そのピンハネをする業者の運営によるビジネスが成立するようになり、益々受刑者数を増やすことになっている。貧困な受刑者には裁判も受けさせず、看守による暴行なども多く、あまりにも劣悪な条件に対する受刑者の抗議や暴動、訴訟などもあり、結局、刑務所の経費節約にもならず、再び官営に戻す動きも起こっているようである。

 それにしても最近のSNSに見るアメリカの警察官のアフリカ系市民に対する対応はこれが文明国で行うなわれていることかと驚かされる、およそ日本では考えられない、白昼堂々とした野蛮な行動であることは見るものに戦慄を覚えさせる。我々直接には関係のない第三者から見ても、目を背けたくなるような残虐さである。何とかならないのかと思うのは私だけではあるまい。