黒川検事長の退職

 森友学園問題以来、安倍内閣の守り神的役割を果たしてきた黒川検事長がとうとう辞職した。安倍首相がわざわざ閣議決定までして定年を延長し、検事総長につけようとし、世間から非難されると、姑息な方法で、法律まで改正して、後付けで合法化しようとしたことに国民の怒りが爆発したのは当然であろう。

 コロナのパンデミックで非常事態宣言の出ている最中である。安倍内閣のコロナ対策が初めからあまりにも遅く、自粛を要請しながら補償があまりにも少ないので、多くの人たちが生活に困窮したり、不安を抱えている最中に、まるで火事場泥棒のように、こっそりと公務員の定年延長問題と抱き合わせて、検察人事を好きなように変えようとしたからである。

 コロナの特別措置法のためにデモは出来なくとも、仕事が出来なくなって困っている多くの人たちがTwitterで声を上げ、デモに換えたのである。何でも700万以上のTwittがあったそうである。

 そんなこともあって、政府はとうとう法案を引っ込めざるを得なくなったのである。当然、焦点を当てられた黒川検事長も身を引かざるを得ないであろうと思われていたが、この人が賭けマージャンをしていたことが暴かれてということで辞職した。

 世間では検事長とあろうものが賭けマージャンをして、免職でなく、訓戒だけで、退職手当を7,000万円も貰うのはけしからんという声がもっぱらであるが、私は賭け麻雀の話は政府筋と検事長の合作の下手な作り話ではないかと疑っている。

 どう考えても、自分が世間から注目の的となり、その問題が頂点に達していることが自明な時期に、それも検察のトップの地位にある者が、わざわざ法に違反していることを承知で、この時期に、しかも報道関係者と賭けマージャンなどする筈がないであろう。マージャンをしたのが検察法案改正審議中の5月に入ってから2回ということだそうである。

 以前からマージャンのアディクトだったとも報じられているが、マージャンは好きだったのであろうが、賭けマージャンの常習犯であったとすれば、問題の人物であるのだから、もっと早くに誰かがすっぱ抜いていたに違いない。黒川氏が世間の注目を浴び出してからの期間はもう長いし、政治がらみのことなので、誰にもそれが分からなかった筈がない。

 そうとすると、これは黒川氏の弱みに付け込んで、黒川氏が強制されて5月の賭けマージャンをさせられたのではなかろうか。黒川氏にはこれまでの長い政権との関わりがあるので、何らかの弱みを握られている可能性も高い。政権側もこれまで持ち上げてきた黒川氏を、何もなかったかのごとくに、素直にこっそり辞表を出させて辞めさすわけにはいかないであろう。

 おそらく、辞め方をどうするかが議論された結果が賭けマージャンの一件となったのではなかろうか。ひょっとしたら、賭けマージャンを利用して検察側に圧力をかけ、あわよくば、検事総長に責任を取らせて辞めさせるために利用しようと考えたのかも知れない。黒川検事長が辞めるなら、黒川検事長に反対していた検事総長をも辞めさせて新たに出直そうというのが政権中枢の考えだったのかも知れない。

 森本学園問題の時と同様、安倍首相は利用出來る時はさんざん利用して、もうダメだと思ったら情け容赦もなく切り捨てて、自分の保身に走る人なのであろう。

 以上は全て私の推測にすぎず、当たっているかどうかわからないが、検事長の賭けマージャンの新聞記事を見てまず頭に浮かんだ疑問であり、SNSを見ていると、同じようなことを書いている人もいたので、私だけの邪推とも言えないようである。