コロナ時代の河川敷公園

 我が家の近くには猪名川という一級河川が流れている。丁度、山地から平野に流れ出たあたりになり、あと平地を大阪湾に流れて行く途中といった所で、両側を広い堤防で囲まれた中をそこそこ蛇行しているので、堤防の中にもかなり広い河川敷があるので、そこを利用して何面もの野球場やサッカー場、それに児童公園などが作られている。

 川の西側はもう兵庫県であり、伊丹空港から伸びた高速道路が東側から川を斜めに横ぎり、西側を川に沿って北上し、北には美しい高速道路の吊り橋状の塔が高く聳えている。川を横切って阪急電車の鉄橋が架かっており、川の西側にはJRの宝塚線が走っている。阪急電車の鉄橋の北側には呉服橋、中橋、絹延橋、南側には中国道の橋や軍行橋といった橋がある。

 少し南方よりの東側に伊丹空港があり、そこから飛び立つ飛行機が次々と上昇し、やがて旋回して伊丹の昆陽池あたりで雲間に隠れていくのが眺められる。川には所々に小さなダムがあり、それぞれに違った景色を作っている。流れに沿って、あちこちに自然に育った木々があったり、季節によって色々な野の花も咲いている。場所によっては植えられた桜並木が続く所もある。

 川には鳥たちも多くいて、烏や鳩、雀ばかりでなく、最近は椋鳥が多く、その間を鶺鴒が飛び、鶲もひょっこり顔を見せる。また流れの中には季節によっても違うが、鴨の群れが泳ぎ、白鷺が飛んで行くと思えば、青鷺がじっといつまでも獲物を待っている。たまに黒い鵜の群れがやって来たこともあった。鳩の餌をやる人を時々見かけるが、先日は空を舞う鳶に餌をやるためにじっとベンチの前に立っている人を見かけた。

 河川敷の野球場やサッカー場も大いに利用されているようで、週末には10面近くあるのに全て利用されている盛況である。また今年はどうなるかわからないが、これまでは、毎年夏にはこの河川敷で花火大会や野外の音楽ライブも行われ大勢の人で賑わっていた。

 そんなこんなで、もう今では開発し尽くされた都会の周辺には、他にこのような広いオープンな感じのする空間が少ないので、この河川敷は平素でも結構人を惹きつける魅力があるようで、近隣の人たちに色々利用されている。私たちにとっても、丁度手頃な散歩道にもなるので最近のように家にいることが多くなった生活の中では、始終利用することになっている。

 堤防の上まで上がればもう車も来ないし、景色は良いし、空気も気持ちが良い。気持ちの良い風に吹かれて、つい何処までも歩いてみたいような気になる。堤防の上は色々な人が利用している。近くの人が朝の散歩に歩いているし、犬を連れている人もいる。犬を河川敷の広場で走らせている人も見られる。私のようにシルバーカーを押して散歩している人もいる。堤防は一番はっきりとした一本道なので、ランニングしている人、サイクリングをしている人も多い。中には自転車通勤をしている人もいる。

 こうした景色は以前からずっと続いているが、最近は新型コロナの影響で多少変化がみられるようである。花火大会や音楽のライブは別としても、日頃利用されて来た野球場やサッカー場も閉鎖ということになっているのか、週末でも試合はなく空っぽのままである。勝手にやってきた人がキャッチボールをしたり、ノックをして打撃の練習をしたりしている。

 堤防の上の道では、ラニングする人やサイクリングの人が確かに増えているようである。散歩する人も時間により変わるが、以前は散歩していて出会う人は殆どが単独の老人か、老人のアベックで、若い人は殆ど見かけなかったが、最近はまだ現役世代の夫婦のアベックが増えたのが特徴的である。コロナで夫婦が一緒にいることが多くなったため、狭い家の中でずっと一緒にいるストレス解消のために出て来たのだろうか。中年世代のアベックが増えたことは良いことのようにも見えるが、コロナ離婚という言葉もあるぐらいなので、実際はどうなのであろうか。

 そういえばコロナの時代になってから、家族ずれで河原にやって来て、小さいテントを張って、中で食事をしているような風景もアチコチで見られるようになった。土手の斜面に寝転がって話をしているアベックもいる。学校が休みでエネルギーを持て余しているような高校生ぐらいの子達が4〜5人集まって走り回ったりしている姿もある。「三密を避ける」と知ってはいても、こんな若い子達に家でじっとしてろと言われても無理であろう。

  以前は河原の児童公園は幼稚園の園外活動で利用されていたが、その他にも、幼稚園か保育園の子供を乗せる自転車を何台か止めて、子供を遊ばせながら、親の懇親会か、一緒に弁当を広げて談笑しているような姿も見られたが、コロナの時代になって最近は見なくなった。最近は、明らかに子供の運動不足解消にお母さんが無理やり連れ出してきたような親子連れもある。

  いつも同じように見えても時代の変遷とともに、河原の人々の景色も少しずつ変わっているようである。一番よく分かるのは、河原で休んでいて、空港から飛行機の飛び立つのを眺めていると、今年の初め頃までは10分も間を空けずに次から次へと飛び立っていく飛行機が見られたが、最近はすっかり少なくなってしまったことである。

 今のコロナによる自粛ムードの状態がいつまで続くのかはっきりしないが、こんな静かな公園で見ていても、その影響がひしひしと感じられる。この先どのように変わっていくのであろうか。