漢字変換の間違い

 最近、SNSを見ていると思わぬ文字を見てびっくりすることがある。その殆どは漢字の変換ミスによるものである。日本語には同音異語が多いので、漢字変換の時、漢字が沢山並んでいる中から選択するので、自分では正しい選択をしても、急いでキーを叩いていると、その間に一行ずれて、出来上がった文章を見ると、全く違った同音異語を選んでいたりすることがあるものである。

 特に同音異語が多い言葉の時など、中々お目当の文字が出てこなかったりして、つい慌てて誤って、一つ上や下の変換文字を選んでしまうことにもなり易い。何しろ日本語には同音異語の漢字が多過ぎる。三つや四つなら良いが、十五も二十もあれば、選ぶのに、どんどん下送りをして、目的の文字が出てくるまでイライラした覚えのある方も多いことだろうと思う。

 色々あるだろうが、例えば、「きせい」を変換しようと思ったら出てくるわ出てくるわ、帰省、規制、寄生、既成、寄生、奇声、棋聖、気勢、既製、機制、紀勢、規正、期成、希世、木勢、木性、規整、祈請、祈誓、気生、期生、喜生、気性・・・と続く。

 昔、同音異語を利用した遊び言葉もあった。有名なのは「きしゃのきしゃがきしゃできしゃした」すなわち「貴社の記者が汽車で帰社した」というものである。あまり出来は良くないが、真似をして「招待された商隊は正体不明の内に消退した」「刑事は警視の刑死を軽視した」「当校の陶工や刀工は東高に登校して投降したと投稿された」など色々作れるであろう。

 また、SNSを見ていると、時に面白い変換ミスに出くわす。「酒席を共に」が「首席を共に」になっていたり、「脂肪が多いと死亡が多い」と言われたり、「急募」はまさに必死の「救募」だったりする。偽陽性が欺陽性とあれば、何か誤魔化された感じがするであろう。

 「気候変動で機構が変更されたりする」が、「事故の責任」は「自己責任」とされ、「事故」が「起これ」ば「自己」に「怒る」人もいれば、「自認」して「辞任」する人もいる。しかし、「無恥」の「無知」は「鞭」打たれるべきであろう。

 漢字変換ミスでなくても、キイボードの打ち間違いも時々見られる。「先日」が「戦時中」になっているかと思えば、「行なった」が「多なった」ぐらいは良いとして、「承知しました」が「焼死しました」とか「お願いいたします」が「オメエが遺体です」などとなればもう穏やかではなくなる。

 原稿用紙に書いていた時と違い、パソコンで入力するようになると、効率は良くなったが、それはそれで、また新たな様式のミスが伴うものである。いかなる手段を取ろうと人は必ずミスをするものである。