カタカナ略語に振り回される

 2〜3年前のこのブログにカタカナ略語について書いたことがあるが、最近の日本語には益々新しいカタカナ略語が多くなって我々老人にはもうついていけない感じさえする。

 昔からカステラ、ズボン、シャツ、パンツ、ポストぐらいから始まって、ハンスト、ゼネスト、リストラ、プレハブ、シャーペン等など、日本語には外来語が沢山入って来ていたから、あまり気にすることもなく普通に使ってきた。最近でも、パソコン、セクハラ、ファミコン、ラジカセ、フリーター、オフレコぐらいのところなら、もうすっかり日本語になっているので問題はない。

 それでもコンのつくのは日本語に馴染みやすいのか。カタカナ英語で一番多いのではなかろうか。オフコンスパコンファミコンポケコンマイコン・ミニコンなどはコンピューターだが、コンはそれだけではない。エアコン、ドラコン、バリコン、マザコン、ラジコン、ロリコン、ミスコン、合コンなど、沢山あるが、オリジナルのコンは色々であり、アイコン、イコン、ビーコンなど短縮系でないものもある。

 こうしたカタカナ略語は最近は益々増えて、テレビや新聞、SNSなどを見ていると、何かわからないものにやたらと遭遇する。

 テレビで何回も「サラメシ」と書いた番組を見かけるので何のことかと思ったら、サラリーマンの昼飯のことのようであった。「トリセツ」も始め分からなかったが、何のことはない。取扱説明書もことである。昔なら短縮するにしても漢字で「取説」となるところで、これなら漢字は表意なのでずっとわかりやすいが、今は何でもカタカナにするので余計に分からない。

 「ラテ欄」とあっても何のことか分からなかったが、新聞のラジオやテレビ番組の紹介欄のことであった。「バスタ」とあるからパスタかと思ったらバスターミナルのこと。「ダブスタ」はダブルスタンダード、「オリパラ」はオリンピックとパラリンピックのことだと分かったが、「アニソン」「ガンプラ」「プロボノ」となるとグーグルで引いて見ないと分からない。「アニソン」はアニメソング、「ガンプラ」はガンダムプラスチック、「プロボノ」はラテン語のpro bono publicoから来ていてプロフェッショナル・ボランティアを指すのだそうである。

 中にはややこしいものもあり、「トレペ」というから「カンペ」すなわちカンニングペーパーの類推からトレーニングペーパーかと思ったら、さにあらず、トイレットペーパーのことだったりする。

 それでもまだ、名刺は良いが、動詞のカタカナ交じりになるとさらに難しい。例えば「スレチ」「ディスる」「ポチる」「チャリ通」など。こんなのも、もう日本語化してしまっているようである。

 「スレチ」ぐらいならまだすれ違いのことかなと想像出来るかもしれないが、「ディスる」となるともう分からない。これはSNSでよく使われており、disrespectを略したもの。相手を否定するとか、侮辱することを意味するものなのである。

 「ポチる」はアマゾンなどで買い物をする時、キーをポチッと押すところから言われるようになったものらしい。「チャリ通」はチャリンコ、すなわち自転車で通勤なり、通学なりすることを言うのだそうである。

 また「コングラ」とあるので何かと見てみると「コングラツィア」の略とある。それでも何のことかわからない、イタリア語のcon Graziaから来ているもので、例の問題となったレオパレスのマンションにつけられた名前であった。

 もっと酷いのは「オ」だけ、「リ」だけ、「オケ」だけというのもある。これらはshort mailやlineなどで文字で通信する時に、用いられるもので、「オ」はお疲れ様の略、「リ」は了解、「オケ」はOKのことだそうである。常用されるので省略形が使われるようになった経緯は十分想像出来る。音声入力になれば消えていくであろう。

 まだまだあるであろうが、もう老人にはだんだんついていけなくなっていく。そんな心配とともに、将来の日本語がどうなっていくのか、これでいいのかとこちらの方が余計に心配である。