シルバーカー

 

 昨年の10月から脊椎管狭窄症になり、間欠性跛行と言って、しばらく歩くと右足が痛くなって立ち止まらなくてはならなくなり、しばらく休むとまた歩けるという状態になり、家から駅まで4〜500米ぐらいしかないのに、途中で2回位は休まなければならなくなり、突然、何処へも行き辛くなってしまった。

 何処へも行けないでは困るので杖を使い、休みながらも毎日歩く練習を続け、脊椎管狭窄症に良いとされる運動を試みたり、自転車なら乗れる話を昔から聞いていたので、腰の曲がった老人のように前屈みになって歩いてみたり、色々工夫もしてみた。

 手術という手もあるだろうが、昨年病院でMRIで調べてもらった結果は大した変化は認められず、このまま様子を見てはという結論だったし、過去の周囲の人の経験からも手術しても、あまり結果の芳しくなかった人も何人か知っているし、自分の歳を考えると、手術は出来るだけ避けたいと思っていた。

 ところが、年末頃から次第に家にいて、じっとしていても、右下肢が痺れたような痛い感じがしてきて、夜も真っ直ぐに仰臥位で眠れず、側臥位で膝を曲げねば眠れなくなってきた。そのためか余計に歩き難くもなり、とうとう駅まで辿り着けず、途中から電信柱ごとに休みながら、ようやく家に戻ったというようなことにまで起こってしまった。

 痛みがあるので、もう一度病院に行って、薬だけでも貰っておこうかと考えて病院へ電話したが、予約の電話がかからず、日を変えてと思っているうちに、今度は新型コロナの騒ぎが起きて来て、病院でこの上コロナをうつされてはと思ってそれも止めた。丁度、コロナのお蔭で色々な会合が片っ端から取り止めになったので、痛い足を引きずって出かけなくてもよくなり幸いだったが、そうだからといって痛みが減ったわけではない。

 それで様子を見ていると、比較的痛みやしびれの軽い日や歩きやすい日もあれば、そうでない日もある。こんなことで動けなくなっては大変だと思い、体を動かしたり、休を入れながらも、出来るだけ歩くことは続けていた。

 その頃までは、杖をついて歩いていたが、ある時、一緒に歩いていた女房の手押しの買い物カートに手をやって、杖とカートを両方持って歩くと少し歩きやすいので、それにヒントを得て、時々山へ行く時などに使っていたノルディックウオークのダブルスティクスを持ち出して、それを使って歩くようにしてみた。

 そうすると確かに歩き易い。休まずに歩ける距離が随分と伸び、休み休みであるが、箕面の滝までも行けた。それでも歩いていると、そのうちに右足が痛くなり、所々で何処かに座ったり、寄りかかったりして、足を休ませてやらなければならなくなる。

  また、歩けなくても自転車ならいけることも知っていたが、歳を考えると危険だからと思って考えに入れなかった。しかし、三輪の自転車、それも電動式にでもすれば、遠くまで行けるし、利用出来るのではないかとも思ったが、駐車の場所が限られ、そこから目的地まで結構歩かねばならないことになりそうなので、買い物ぐらいには良くても、近くの日々の行動にはそれほど役に立ちそうでない。

 そこで思いついたのがシルバーカーである。四国では「おんば」と言われる乳母車を押して、腰の曲がったおばあさんが買い物に行っている姿をよく見たものである。あれなら自転車のように前屈みになって押すので、きっと歩き易いのではなかろうかと思って目をつけた。

 近くにフランスベッドの介護用品を扱っている店があるので、そこへ行って色々見せて貰って、実際に押してみたりしたが、歩き易そうで、買い物籠などのついていない結構スマートな設計のものもあった。グーグルやアマゾンで色々探してみて、色々な知識も得た。

 対象となりそうなものに歩行車とシルバーカーというものがあることがわかった。前者は自立歩行が難しい人を対象に作られたもので、室内用が主で、ハンドル部分が身体を囲うように大きくU字型に出来ており、そこに体を預けるような形で利用するもので、介護保険のレンタル対象になっている。それに対し、シルバーカーというのは自立歩行が可能な人が、散歩や買い物に行くのをサポートする歩行補助具で、こちらは介護保険の対象外ということであった。

  当然、利用出来るのは名前は悪いが、シルバーカーである。少し格好も悪いかなという躊躇もあったが、そうも言ってられない。結局携帯して電車やバスにも乗れる、2.7Kgという一番小さくて軽いものを手に入れた。

 少し格好は悪いかも知れないが、これを使うと案の定、歩くのはぐっと楽になった。家で動いて足が痛むような時でも、このシルバーカーを使うと、少し前屈の姿勢になるからなのか、歩き易く、休まなくとも行ける歩行距離がぐっと伸びた。以前なら、ここで休んだという所を横目で見ながら、ぐんぐん進んでいける。もちろん、日によって違うが、昨日と一昨日など、二日続けて8千歩、1万歩と歩くことも出来た。いずれも途中で2〜3回休んだだけである。

 足が悪くなってから、道を歩いても他人に追い越されるばかりになってたが、シルバーカーになってからは、普通の人には敵わないが、杖をついた老人などは、これ見よがしに、こちらが追い抜いて行くことにもなった。少しばかり前屈の姿勢をしてシルバーカーを押していく姿は、少しばかり気の引けるような感じもするが、途中で休み休みしなければならない杖歩行よりは、ずって快適に移動出来る。有り難いことである。

 気候も良くなってきたし、しばらくはシルバーカーに慣れて、せいぜい近くの散策を楽しませて貰おうかと思っている。

追記:ただシルバーカーを使っていて分かったことは、山道などの坂の登りは良いが、下りが少し難しいことである。急な坂では、体が前のめりになって、しかも車が滑りやすいので、ゆっくりとブレーキで車を止めたり、外したりしながら、超低速でないと坂を下り辛い。下りはシルバーカーよりダブルスッティクスを使った方が良いのではなかろうか。

 一度箕面の滝まで往きはシルバーカーを押して登り、帰りの下りはダブルスティクスで行ってみようかと思っている。

 

 

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歩行車

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シルバーカー