アビーコレクションの竹工芸名品展

 先日女房が留守なので、作ってくれていた昼飯を炬燵に持ち込んでテレビを見ながら食べていると、テレビが表記の展覧会の案内をしていた。何でも日本の竹の造形に魅了されたアメリカ人Diane and Arthur Abbeyが収集した竹を素材とした作品で、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたJapanese Bamboo Art:The Abbey Collectionを再編成したものということであった。

 同じアートの中でも、繊細な工芸品に関する関心は絵画や彫刻ほどではないので、何となくテレビを見ていたら、竹製品とは思われないような細長い茶褐色の女性像を思わせるシルエットの作品の説明があり、どう見ても竹細工とは思えない素晴らしさに思わず画面に惹きつけられた。何処でやっているのかと思ったら、中之島の東洋陶磁美術館とわかったので、それならと思って、食事を済ませてから早速出かけてきた。

 美術館に入るなり、受付を兼ねた吹き抜けの空間を生かした巨大な竹のインスタレーションが目に付いた。二本の曲線を描いた大きな竹の筒が、地面ではお互いに絡み合い、上にいくにつれて離れ、二階の天井にまで達し、そこで天井一杯に広がるといった雄大な作品である。大阪の現代を代表する作家、田辺竹雲斎の作ということであった。

 入場券を買って階段を上がる。第一の部屋は現代の作家の作品を集めたようで、竹の軽やかな曲線を存分に生かして空間に飛び出すような作品や、地に這うような作品、或いは地を転がるようなものなど多彩で、それでいて軽やかなものも、きっぱりとしたものもあり、それぞれに竹による表現の多様性が発揮されていて面白い。

 次いで、階段のすぐ横の比較的広い部屋に入ると、そこにテレビで見た女性像を思わせる清楚な像があった。近くで見ても竹で出来ているとは思えない。極細な竹紐を組み合わせて作り、漆を載せているので、銅か何かの金属ででも作られている感じの外観。最上部は竹の節がそのまま使われた開口部で、細長い花入れになっており、女(ひと)と名付けられていた。細長い胴体部分は途中でわずかに婉曲し、壁に映った影が細っそりとした女性を思わせる素晴らしい作品であった。

 その他のものも素晴らしいものが多く、全てで75点だそうだが、竹を素材にして、こんなに色々出来るのかと驚かされる作品にあふれていた。竹で作ったトランク様の真四角な箱と硯箱、複雑な編み物の花器、長い柄のついた車に重厚な花器が載った作品など、どうしてこれが竹で出来ているのか不思議に思われるぐらい、竹の造形表現の幅の広さに感心し、その魅力に圧倒される催しであった。

 竹の造形といえば、竹籠や竹の花入ぐらいを思い出すぐらいのことであったが、竹の造形、表現の広さを改めて認識させられた1日であった。