東京都だけ死者がいない

 

  令和元年台風第19号による被害

《死者の内訳》令和元年10月15日(火)5時00分 消防庁災害対策本部
【岩 手 県】2人(宮古市田野畑村)
【宮 城 県】1人(登米市)
【福 島 県】16人(郡山市4、白河市須賀川市2、二本松市2、南相馬市本宮市5、飯舘村) 【茨 城 県】1人(大子町)
【栃 木 県】4人(栃木市足利市鹿沼市2)
【群 馬 県】3人(藤岡市富岡市2)
【埼 玉 県】2人(東松山市鳩山町)
【千 葉 県】1人(市原市)
【神奈川県】5人(川崎市相模原市4)
【長 野 県】2人(長野市佐久市)
【静 岡 県】1人(牧之原市)

 

 今度の台風19号では関東甲信越東北地方にかけて広範な被害が出て亡くなられて人も多く、消防庁災害対策本部からも上記のように、各地方の死者の内訳が発表されていた。

 痛ましい犠牲者に対しては、心からご冥福を祈るばかりだが、この表を見ていて気になったのは、関東一円に死者が出ており、埼玉、神奈川、千葉と周りの3県でも死者が出ているのに、その中央にあり、人口が特別多い東京都で死者が一人も出ていないことであった。

 もちろん、死者が出なかったことは喜ぶべきことであるが、人口が飛び抜けて多いのに、どうしてこの違いが出たのであろうかという疑問が生じた。

 台風の強さや雨の量、地理的条件などいろいろ複雑な条件が重なった結果であるから簡単に結論づけられるような問題ではないが、どこかに違いがあって、この結果が生じたのではなかろうかと思いたくなる。

 東京でも、二子玉川での堤防の未整備地区の浸水なども起こっているが、荒川と江戸川に挟まれた海抜0米地帯も幸い浸水を免れたようだし、広範な埋立地などのひどい被害も今のところ聞かれない。

 地理的条件や、その時の気象条件の違いもあろうが、どうも河川の整備状況や地域の防災状況が東京都と他府県で違ったことが被害の強弱にも関係しているのではないかという気がしてならない。

 東京一極集中の反動もあり、地方の少子高齢化、過疎化などにより、河川その他の基盤整備やその維持が遅れがちになり、その結果として生じた地域の防災力の違いを象徴しているのではなかろうか。

 東京都内は来年のオリンピック開催もあり、従来以上に諸施設の整備が進み、防災の面でも古いものはどんどん新しい強力なものに更新されていっているのに対し、地方ではその疲弊とともに、相対的に諸設備の老朽化が進み、その更新なども遅れがちになっているのではなかろうか。

 堤防にしても、他の暴風や治水の対策にしても、新しいものと古いものでは違うであろうし、人口の多寡によってその整備状況も違ってくるであろう。その防災力の差がこの死者の違いに現れているような気がしてならない。

 これは私の個人的な感想に過ぎないが、今後ますます進む少子高齢化や大都会への人口の集中、地方の過疎化が進むこの国が、地球の温暖化が進み地震や台風などの自然災害の多発することが予想される中で、それに対して如何に対処していくべきか、ここらで長期的な視野に立って、根本的な対策を立て直すべき時が来ているのではなかろうか。